Berkeley

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ゴスペルと壁画

2009年03月09日 16:24

今日は、日本太平洋資料ネットワーク(JPRN)というNPOの招きで、サンフランシスコの社会運動に関するツアーに参加してきました。

訪れたのは、そのリベラルな活動で世界的にも有名な、グライド・メモリアル教会(Glide Church)の日曜礼拝と、サンフランシスコのヒスパニック系住民が集中している「ミッション地区」で展開している壁画運動のツアーです。

まず前者のゴスペルによる礼拝は、ニューヨークで体験しそびれたので、初体験となりました。11:00~12:30の約90分の礼拝の中で、約 60分ぐらいは歌を歌ったり、聴いていた気がします。つまり、「礼拝」というよりも、「コンサート」といった印象です。写真(左)にあるように、参加者 は、礼拝中ほとんど総立ちで、手拍子をし、身体を揺らしているわけです。

それと、メンバーの誕生祝いをしたり、隣に座った人と手をつないだり、抱きあったり、短い時間でしたが、人のぬくもりや「愛」を感じる趣向がふん だんに凝らされていました。根源的に孤独なアメリカ人も、週に一度この教会にくれば、「自分は一人ではない」と強く感じられるのではないかと確信しまし た。週に一回でも、見ず知らずの人たちと皆で歌を歌い、神を賛美し、握手をし、抱き合うという経験は、日本にはありません。今回の経験は、ぼくの心の中に も何か新しい火がともったような感覚となって残りました。

さらに、最後の30分の「説教」は、その内容も、話すスタイルも型破りです。

「神が男だってだれが決めたんだ! まず神に対する誤解を解かなければならない。女性はそうやってずっと抑圧されてきた。オバマ大統領夫人もそう だが、黒人社会で女性はずっと「ビッグママ」として実権を握ってきたように語られるが、実際は、女性はずっと社会的な差別やドメスティック・バイオレンス に苦しめられてきたのだ!…。」

いちいち納得の内容なのですが、教会でこんなことが言われている図は、予想を超えていました。また、牧師さんは牧師さんというより、まるでムッソリーニやカストロのような、革命家や政治家という感じ。血管が切れないかと心配になるぐらいの「熱い」語り口でした。

会場も、「Oh Yeah !」という相づちの叫び声が方々からひっきりなし。本当に驚きました。

グライド教会は、メソジストの教会ということもあってか、すべての壁を取り払い、ホームレスやエイズ患者、高齢者などの社会的弱者に食事や医療を届けるといったさまざまな活動を展開しているようです(http://www.glide.org/を参照)。アメリカではこのような教会が、まさに「デモクラシー」や「市民社会」を構築する骨格の一つであることを痛感しました。

次に訪れたミッション地区は、迷いこめば本当にそこは「メキシコ」そのもの。看板もスペイン語だらけ。歩く人も、道で遊ぶ子どもも、明らかにヒス パニック系の人々が多くなります。そこで、長年にわたって「壁画」を通じてコミュニティの活性化やアート教育を実践してきた「プレシタ・アイズ壁画アート センター(Precita Eyes Mural Arts & Visitors Center)」のツアーに参加しました。

これも驚くべき活動です。1977年に始まった長い歴史をもつ活動で、そこには、メキシコ革命における壁画運動の影響や、アメリカの公民権運動や 反戦運動など、多くの「対抗文化」の歴史的潮流が流れ込んでいるようです。調べたところ、どうやらエミー・ロウ・パッカード(Emmy Lou Packard:1914‐1998)という、かつてディエゴ・リベラの助手をしていたアメリカ人女性がキーパーソンの一人であるようです。現在その活動 は、さらに拡大し、「アートを通じた社会の形成」一般を目指したきわめて包括的な活動になっています(サイト、http://www.precitaeyes.org/を参照)。

子どもや若者は潜在的に「アーティスト」であり、またそのアート教育を通じて、自らの誇りや表現する力を培い、さらには人々が地域へ参加するきっかけをも与えることができるという発想は、すばらしいと思いました。

写真(中)を見てください。この街ではマクドナルドまでがキャンバスです。無数のプロ、アマの「アーティスト」たちが、街中を「アート」すること で、街全体が楽しく明るくなり、犯罪や落書きも減っていったといいます。街の住人達は、自分の家屋やガレージを快くキャンバスとして提供し、アーティスト たちは、存分に自分たちの歴史や願いを壁画を通じて語ります。

写真(右)は、2000年のあの有名なボリビアにおける「水戦争」を描いたものです。迫力がありますね。Juana Alicia さんの「La Llorona」(2004年)という有名な作品です。壁画は、たとえ文字が読めない人でも歴史や権力の本質を理解し、記憶することを可能にします。こう いう記憶の装置が、街中にあることを想像してみてください。

「市民社会」のもう一つの基盤は、<宗教(教会)>に加えて、音楽もふくめた<アート>であるということも確信できました。

日本に帰って、するべきことがどんどん増えていきます。