Berkeley

2009

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「日本」の第一印象

2009年08月25日11:43

先日、無事帰国しました。

アメリカでの生活は、今となっては夢だったようにも感じますが、まだ日本に馴染んでいない「外国人」の自分も残っていて、奇妙な感じです。未だに 左側通行に慣れず人とぶつかりそうになるし、ゴチャゴチャ込み入った日本語が多すぎて、無意識にシンプルなアルファベットを探していたりする自分がいま す。それで、今の新鮮な「日本」の印象を忘れずとどめておこうと思い、日記を書きます。

1.湿度が高い。高すぎる。
帰国した日は特に蒸し暑く、「ここは東南アジアか!」と思ったくらいです。地球温暖化が進行したのでしょうか。この湿度は、単に気候の問題であるだけでなく、人間関係、ひいては思想や文化そのものにも大きな影響を与えているにちがいありませんっ。

2.アナウンスがうるさすぎる。
傘の忘れ物をするなとか、切符を取れとか、とにかく「公」が人の行動にうるさく介入しすぎ。子どもじゃないんだから。もっとほっといてよ。もっと静かにやろうよ。

3.情報量が多すぎる。
ゴミのような情報がほとんどですが、重要な情報も含めて何もかも、目や耳に飛び込んでくる情報があまりに過剰で、目まいがしそうです。情報の密度は高いのですが、これでは、ゆっくり長いスパンでものを考える習慣を形成するのは難しそうです。

4.清潔すぎる
日本はまぎれもなく、無菌大国です。成田空港は、まるで家の中のような清潔感を感じます。国境の内側に入ったとたん、まるで靴を脱いで家の中に入ったようになる。それが今はちょっと気持ち悪いのです。

5.快楽の追求と食文化・消費文化の完成。
なにしろ、ケーキも料理もきわめて繊細。細かい味の差異や消費的快楽の追求は行くところまで行きついているという印象です。細やかなサービスの質 はおそらく世界一。この国では、疲れた神経を癒し、あらゆる不快を取り除くための仕組みや産業がもはや完成を見たのではないかと感じます。また、このこと はきっと、日本の古くからの文化的伝統によっても支えられている気がします。しかし、あらゆる分野で凋落しつつある日本にとって、逆にこの点は、最後に 残った国際的な「強み」であると言えるかもしれません。

6.なぜ皇室?
東京駅でなぜか皇太子と遭遇。無数の警官が、かつての大名行列のように庶民を脇にどけて道をつくる。ここはどこだろう。なんで21世紀にこんな人たちがいるのだろう。本当にエキゾチックで変な国だと感じました。皇室を「外」の眼から眺めた初めての経験でした。

7.地下で生きる人々
東京の中心では、もはや戸外に人はまばらです。不快指数が極限まで達した戸外を避け、人々がうごめくのは、空調管理された、どこまでも広い地下のショッピングモール。東京人はすでに「地底人」なのです。まるでSF映画のよう。

まだまだありますが、以下、暫定的総括。

心地の良い、「配慮」の完全に行き届いた、母親の羊水のような空間の中で、日本人はきわめて近視眼的に日々の小さなことに追い立てられ、セカセカ 生きている。近未来的な「日本」という精密な管理カプセルの中で、人間の野性は極限まで飼いならされ、逆に人々は動物化(家畜化)している。それぞれが体 系的に「自分の自律的な時間」を奪われている。したがって、真の<思想>や<思考>はほとんど生育できない。

まるでオルダス・ハクスリーの『すばらしき新世界』…。

渡米前にも、この得体の知れない「カプセル?」のようなものの存在を薄々感じてはいたのですが、今回改めて「外」の視点からこの社会の特性を感じ取ることができました。

ついでに、現代において「留学」の最大の効用は、かつてのように外国の最新文化を見聞するというのではなく(そういう意味での留学は終焉したと言えるかもしれません)、おそらくこのように、自分の生まれ育った社会の相対化にこそあるようです。