地域連携

砂丘と潟は新潟の個性であり宝である

越後平野は、過去から現在まで続く地殻変動と気候変動の結果として、砂丘や潟といった地形とともに形成されてきました。砂丘や潟は古くから新潟の人々の生活と密接に関わってきました。まさに砂丘や潟あっての新潟だったのです。しかし、高度経済成長とともに、数えきれないほどあった潟は急速に姿を消し、砂丘も農地や宅地として利用され、本来の姿を大きく変えました。

新潟砂丘プロジェクトの始まり

このプロジェクトは、2015年度の新潟市の公募事業である「里潟学術研究」(研究題目:新潟市赤塚・越前浜周辺地域の砂丘景観の変化-里潟を含めた砂丘の保全と活用-」に採択されたことがきっかけとなっています。

研究成果は2016年に開催された佐潟の「ラムサール条約登録20周年記念事業」において、国際学部の澤口晋一教授がポスター発表しました。また、同記念事業では経営情報学部の小林満男教授が中心となり、佐潟の5ヶ国語パンフレットが作成されたほか、条約登録時の1996年から20年間における同一地点での変化を確認する写真展も実施されました。

このほかにも「第7回赤塚・中原邸保存会総会(2015年)」において小林教授が、続く同保存会の「第8回(2016年)、第9回(2017年)で澤口教授がそれぞれ赤塚と砂丘の魅力について講演を行いました。こうした活動によって地域の方々の新潟砂丘への関心が大いに高まっていったのです。

在りし日の潟。かつて潟は生活の場であり子供にとっては遊びの場でもありました。
石川与五栄門氏撮影
「佐潟ぐるら 今昔20年」と題した、赤塚郷土研究会と本学の共同事業。俗称「蛤道「(字明神浦)」を説明しているところ
赤塚・中原邸保存会の総会で講演・意見交換。”赤塚学”の講座も提案

新潟砂丘プロジェクトの活動と成果

2016年12月に新潟市の補助金を得て「赤塚地域の魅力とお宝展」が本学を会場として開催されましたが、この先行企画として、澤口教授がガイドを務め、赤塚在住の方を中心に市内外からの参加者を赤塚地域の砂丘に初めて案内しました。この砂丘ウォーキングは単に砂丘を歩くだけでなく、砂丘地形についての専門的な解説を聴きながら歩く、というところに大きな特徴があります。この模様は新潟日報にも掲載されました。

これ以降、砂丘ウォーキングは毎年数回実施され、今に至っています。

2018年には西区農政商工課と地元の各団体、そして本学の三者共同制作による「赤塚ガイドブック~まち歩き&砂丘歩き~」が発行されました。

また、2019年には赤塚の砂丘上に自然定着したエノキの大木3本が、新潟市の保存樹に指定されました。新潟市郊外の樹木が保存樹に選定されるのは異例のことです。3本のうち1本は2021年4月発行の「新潟市樹木マップ」の表紙を飾りました。

「新潟砂丘プロジェクト」の次なる目標は、赤塚地域の砂丘を巡り歩くフットパスマップの作成と、砂丘上のエノキ林を新潟市の保存樹林として登録することです。

こうした活動が地域、行政とともに砂丘と潟への理解を深め、それが新潟市の活性化につながっていくことになればと考えています。

2018年に新潟砂丘遊々会によって設置された展望台。
360度のパノラマが広がります。
2021年10月30日に開催されたウォーキング(上堰潟)の模様。
2020年度版樹木マップの表紙。
2019年に新潟市保存樹として指定された「大エノキ」が表紙を飾っています。
2022年度版
樹木マップの表紙。

新潟砂丘プロジェクトの取り組み

2015年

  • 「新潟市里潟研究事業」 (研究課題名:新潟市赤塚・越前浜周辺地域の砂丘景観の変化ー佐潟を含めた砂丘の保全の活用)に応募・採択
  • 上記研究成果が報告書として公開
    新潟砂丘西端域の地形と植生に関する新たな知見とその活用方法について提言
  • 赤塚・中原邸保存会総会にて講演(小林)
  • 西区公民館事業として赤塚中学校で新潟砂丘に関連する講話(小林)

2016年

  • 佐潟のラムサール条約登録20周年記念事業に参加(澤口、小林)
  • 佐潟の5ヵ国語[英露中韓仏]パンフレットの作成(小林)
  • 赤塚・中原邸保存会総会にて講演(澤口)
  • 佐潟と歩む会総会にて講演(澤口)
  • 「潟の魅力創造市民活動補助金事業」にて「砂丘講座(講演)」と「砂丘ウォーキング」実施(澤口)

2017年

  • 赤塚・佐潟地図研究会発足
  • 砂丘ウォーキングの開催(3回)
  • 赤塚・中原邸保存会総会にて講演(澤口)

2018年

  • 「赤塚ガイドブック~まち歩き&砂丘歩き~」発行
  • 「見晴らしの丘展望台」設置
  • 「水と土の芸術祭 市民プロジェク卜」に参加、その一環として現地勉強会およびシンポジウム開催(日本フットパス協会理事 神谷由紀子氏が基調講演)
  • 新潟市社会教育委員会[第33期第3回]にて事例研究報告

2019年

  • 市民プロジェク卜に参加砂丘ウォーキング等の開催
  • 赤塚ボランティアガイド養成講座(地形編)講師(澤口)
  • 新潟市の保存樹にエノキ3本が認定登録(郊外の山林に自生する樹木としては初めて)
  • 北国街道看板(御手洗潟、佐潟ほか)の設置協力(西区事業)

2020年

  • 砂丘ウォーキング(澤口案内)
  • 大エノキが「新潟市樹木マップ 2020年」の表紙を飾る

2021年

  • 上堰潟~峰岡丘陵ウォーキング(澤口案内)
  • 「気になる樹」が新潟市樹木マップ2021年の表紙を飾る
    (新潟砂丘遊々会が保存樹に推したことで指定されたエノキが2年続けて表紙の写真に採用されました)

2022年

  • 砂丘ウォーキング(澤口案内)
  • フットパスコース策定

国際学部 澤口晋一教授・博士(地理学)
2015年度の新潟市里潟研究事業に採択されたことがきっかけとなって、「極地と高山」一辺倒だった私の研究テーマに、「砂丘」と「潟」という大きな柱が一つ加わりました。前者はもっぱら学会が発表の舞台でしたが、砂丘と潟は、研究成果をそこに住まう市民の方々に様々な形で還元できる(もちろん学会でも発表しますが)という点で、私の中に新たな「道」を開いてくれました。これからも新潟の知られざる魅力を発見・発信していきたいと思います。
経営情報学部 小林満男教授・博士(経済学)・技術者(電気電子)
本学に着任した10年前、新潟ならではの魅力を再発見し、その宝物を次世代につなげる活動をしたいと考えていたところ、新潟砂丘に出会いました。新潟砂丘は、草木も生えていない砂漠のイメージの砂山ではありません。松林、ダイコンやスイカなどの砂丘畑、そして住宅地として地元の人たちの生活と密接にかかわりながら様々な姿を見せているところが新潟砂丘の魅力です。晴れた日には、佐渡や角田山、弥彦山を遠くに眺めながら、佐潟の周りや砂丘畑をのんびりと歩いてみませんか。ありのままの風景を楽しみながらフットパスしませんか。

学生の声
「波打った地形」を感じながら歩くように
加賀田侃冶
情報システム学科4年
友人に誘われ「砂丘ウォーキング」に参加したのがきっかけで、興味を持ちましたと。「風と波によって地形ができる」と聞いて「すごいな」と思ったのが第一印象。その後、何回か参加しているうちに、普段、歩いている時でも、波打った地形を感じられるようになりました。卒業研究は、赤塚界隈の風景を撮影し、昔の写真と比較するというテーマを先輩から引き継いで追及。この比較は、新潟砂丘の昔と今を探ることにもつながります。

地域循環共生圏とは

2018年4月に閣議決定された第五次環境基本計画では、国連「持続可能な開発目標」(SDGs)や「パリ協定」といった世界を巻き込む国際な潮流や複雑化する環境・経済・社会の課題を踏まえ、複数の課題の統合的な解決というSDGsの考え方も活用した「地域循環共生圏」が提唱されました。

各地域が美しい自然景観等の地域資源を最大限活用しながら自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて資源を補完し支え合うことにより、地域の活力が最大限に発揮されることを目指す考え方です。地域循環共生圏は、農山漁村も都市も活かす、我が国の地域の活力を最大限に発揮する構想であり、その創造によりSDGsやSociety5.0の実現にもつながるものです。

新潟にしかん地域循環共生圏協議会の発足

新潟にしかん地域循環共生圏協議会は、2020年3月に、本学、岩室温泉旅館組合、岩室温泉観光協会、自然エネルギー発電事業等を行う「おらって」にいがた市民エネルギー協議会などがメンバーとなって発足しました。西蒲地域でSDGsを実践するのが目的で、共同代表に本学の佐々木寛教授を選出。「再生可能エネルギー、農業、観光、大学など地域の基本的機能を有機的につなげて、新しいまちづくり、自立的なまちづくりをしていこうという地域循環共生圏(日本初の脱炭素化・SDGs構想)の実現の第一歩」と佐々木教授は話しました。

電気自動車を観光と地域の活性化に活用

協議会に協力企業として参加した日産自動車からは、電気自動車「日産リーフ」が提供され、岩室温泉を訪れた観光客に貸し出したり、学生が岩室地域の地域課題を掘り起こす研究活動に使ったりなど、観光や地域の活性化に活用する事業を実施しました。

地域課題の研究に活用される電気自動車日産リーフと。
ワークショップは「プラスチックごみを考えよう」というテーマで山田ゼミが実施。
冷蔵庫やテントなどの大物も協力して収集。

西蒲区の海水浴場で海岸清掃

2021年5月には、活動の一環として西蒲区田ノ浦海水浴場の清掃を実施。本学国際文化学科の山田ゼミの有志と、「SDGs推進団体 Rainbow World Project(以下RWP)」、「フェアトレード推進団体 NUIS FT」「環境研究部 NUIS Eco」のメンバー、合計約45名が参加し、地元の方々と協力して大量のゴミを拾いました。

海岸清掃はもともと、RWPが西蒲区間瀬下山海水浴場で2021年3月に2回実施したところ、これに参加した田ノ浦地区の住民から「田ノ浦でもやってくれないか」と打診されたのがきっかけ。学生が通い、打ち合わせを進める中で、毎年行われている「田ノ浦うみまつり」へのアイデアも求められたことから、海岸清掃を5月、7月、10月に行った上で、8月の「田ノ浦うみまつり」にも参画することに。当日は岩室でのプロジェクトで使っていた電気自動車の電力を使ってかき氷を作り、提供しました。

ごみ問題を考えるワークショップと組み合わせて

10月には、新潟市の地域活動補助金を得て、午前中にRWP主催の海岸清掃、午後は山田ゼミ主催のワークショップが行われました。ワークショップは「大学として関わるからには学びとセットにしたい」「SDGsを考えるきっかけづくりにもなれば」との意見から海岸清掃に関連づけ、「プラスチックごみを考えよう」というテーマで展開しました。日本人がプラごみを大量に出している現状やマイクロプラスチック問題などが提示され、グループごとに「私たちに何が出来るか?」を考えました。参加者からは「さっきプラごみを拾ったばかりなのでリアルに感じられた」という感想が聞かれました。また、新潟にしかん地域循環共生圏協議会のメンバーでもある岩室温泉の関係者からは「温泉での宿泊と海岸清掃、大学生のワークショップをセットにして、中学・高校生向けの研修旅行プランとして考えられないか」と、さらなる展開につながる提案も出されました。

学生とともに田ノ浦での一連の活動に取り組んできた山田准教授は「もともと地域連携の活動をしている学生は、コミュニケーション力も高く、新しい場所に入る時にも、経験が活かされている。地域連携やSDGsは、普段の授業と学外活動、2つが両輪となってこそ推進できると、改めて感じた」と話しました。

学生の声
海洋プラスチック問題を根本から考え直すきっかけに
岩野ひかる
国際文化学科4年
RWPの代表として、同時に山田ゼミの一員として、海岸清掃とワークショップに参加しました。海岸清掃では、ごみ拾いにきりがないことを痛感し、「拾えばいいではなく根本から見直すことが必要」と問題意識が生まれました。ワークショップでは、参加者と危機感を共有でき、「プラスチックを社会からなくすことはできないけれど、どう減らしていくか」と考えるきっかけが作れたのではないかと思います。
海岸清掃でゴミ拾いがしやすいように工夫されたトングを使用し、効率よく収集。
地域社会の国際化・活性化×小中学校高校への派遣×多様なアクターとの連携×国際交流ファシリテーターの養成
地域の国際化を推進する参加型実践教育
「国際交流ファシリテーター」の活動
主役は学生。「国際交流ファシリテーター」として認証された学生が、小中学校・高校にグループ単位で出向き、ワークショップ形式で国際理解教育を行い、新潟県の国際化・活性化を推進。

2005年に始まった「国際交流インストラクター」が発展

新潟は、北東アジアと密接につながる本州日本海側の「表玄関」であり、近年の経済・文化交流の増進は、地域の国際化に対応しうる人材の養成を強く求めています。こうしたニーズに応えるべく、2005年に始まった「国際交流インストラクター」の取り組みは、地域社会の国際交流意識、地域活性化を促す意欲的な学生教育プログラムとして高く評価され、文部科学省が行う「平成19年度現代GP(現代的教育ニーズ取組支援プログラム)」に選定されました。その後、新潟県観光協会からの委託事業として継続し、2018年度に「国際交流ファシリテーター」と名前を変え、現在に至ります。

国際理解を促す「伝え役」を養成、小中学校・高校に派遣

「国際交流ファシリテーター」事業は、県内の地方自治体、国際協力組織、小中学校・高校、地場企業、NGOといった多様なアクターとの協力・連携により、大学生を「国際交流ファシリテーター」として養成し、地域に派遣します。

希望する学生はまず「国際交流ファシリテーター」の授業を履修し、ワークショップや学内外の講師による講義を、3~4カ月間受けます。研修を修了すると、「国際交流ファシリテーター」として認定され、6~7名のグループに分かれて、「世界の現実」「世界の不平等」「多文化共生」のいずれかに関連する具体的なテーマを自分たちで設定。グループで学びを深め、テーマを掘り下げ、その成果をワークショップ形式の国際理解プログラムとして、県内の小中学校・高校に赴いて、行います。学生にとっては国際社会に関する基礎・専門知識を習得しつつ、コミュニケーション能力やチームワークを身につけることができ、児童・生徒にとっては、国際社会への関心と学習意欲を高めることになり、地域社会の国際化・活性化につながります。

本学や地域に還元し、次世代につなぐ国際的な視点

このプログラムには、大きく分けて3つの効果があります。1つ目は学習意欲の向上と知的高揚を生むこと。直接参加しない学生にも波及し、既存のカリキュラムの教育効果を高めます。2つ目には、実際にワークショップを受講した生徒が、地域の国際化推進を担う人材と位置づけられること。国際理解教育の担い手不足という教育現場からの要請にも対応し、総合学習の内容を充実することにもつながります。3つ目は、地域社会の国際化というニーズへの対応。大学の教育研究の成果を地域社会に還元することで、国際化の推進が期待されます。さらに、大学が新潟県国際交流協会、新潟県教育庁、国際協力機構(JICA)、NGO、地元新聞社などの外部組織と協力し、連携して生み出した新たな総合的国際理解教育のモデルは、NUISモデルとして県内外に普及させていきたいと考えています。

2021年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で、派遣事業は対面とオンラインの並行になりました。集まってやりとりすることが基本のワークショップは、実現が難しいと思われましたが、学生自身もオンラインの講義を受けた経験を活かし、さらに学生同士でオンラインで伝えるトレーニングをしてから臨んだことで、非対面のデメリットを極力抑えて、実施することができました。今年はさらにオンラインの可能性を探りつつ、「伝える」スキルを磨くことがテーマになります。


学生の声
格差や不平等。国際問題を自分のこととして捉えられるように
吉原里桜
国際文化学科3年
私たちのグループでは「教育格差」というテーマを設定し、例えば義務教育のある日本と「学校に通うことができない」発展途上国の現状などを比較しました。学ぶうちに、SDGsの「貧困をなくそう」や「質の高い教育うぃみんなに」などにも関係することに気づき、結びつけてワークショップにしました。学びから派遣授業という一連の体験を通して、チームワークの大切さと難しさを知り、さらに、遠い出来事だった国際問題を、自分のこことして捉えられるようになりました。

地域×定住×課題
「地域」と「大学」との連携・交流を推進し地域課題をともに考える。
「佐渡若者定住ワークショップ」の活動
「佐渡から若者流出を防ぐ対策」をテーマとしたワークショップを実施しています・新潟県佐渡市の高校生、羽茂小泊集落の住民、佐渡を訪れた外国人の方々とともに考えます。

2012年に始まった薪能イベントに参加する地域活性化プロジェクトから発展

2012 年から 2019 年まで、新潟国際情報大学藤田晴啓ゼミナール生は佐渡市羽茂小泊集落の村社である白山神社奉納能の行事に参加して、地域との交流を続けるとともに、住民の集落活性化に関する意識調査を実施してきました。佐渡の能舞台では、薪能イベントに学生が仕舞、謡、囃子で出演するなど羽茂小泊集落の住民と地域活性化プロジェクトを続けてきました。

2014年からは新潟市の映像製作会社に協力いただいて、能の題材によるプロジェクション・マッピングも演能と合わせた演出として取り入れました。

2019年は、天から鼓と類い稀な才能を授かった少年の霊があらわれる物語「天鼓」の場面にあわせて、鼓や能面・舞台装束をつけたシテ方(主役)を学生が3D化して、演者が出入りする「橋掛り」の壁に投影しました。さらに、実際にホロレンズをつけてシテ方ホログラムを見ているリアルタイム映像「ホロジェクション」も紹介。「再帰映像」すなわち「合わせ鏡」のように重なり写る像を動かすといった演出効果を行いました。自分たちの持っている知識や技術、アイデアを融合させることで、伝統芸能に光を当て、佐渡の能楽イベントに新たな魅力を引き出したいと、藤田晴啓ゼミナール生が活動を引き継いできました。

「ホロジェクション」で伝統芸能を活性化

佐渡の高校生とのワークショップの様子

佐渡から若者流出を防ぐ対策を地域とともに考える

2020 年以降は新型コロナウイルス感染症まん延の影響を受け、同集落における能行事は中止となったことから、学生と地域住民との地域活性に関するワークショップに活動を変更し、交流を続けています。

2022年は、佐渡の高校2-3年生を対象に、佐渡から若者流出を防ぐ対策をテーマとしたワークショップを実施し37人が参加しました。また、羽茂小泊集落では、集落を含め佐渡在住の方々と同様のテーマでワークショップを実施し29人が参加、そのうちボランティアで佐渡滞在中の外国人6名も参加しました。

活動の中で、佐渡定住に関するアンケートを実施しています。2022年実施分は集計中ですが、2021年の結果は、羽茂小泊集落のワークショップで佐渡定住率が低い原因として「仕事が少ない」、「遊ぶ場所が少ない」、「進学先が少ない」、「店が若者向けでない」でした。高校生ワークショップでは、佐渡で育った若者が佐渡にもとめる条件として「快適に日常生活をおくるために必要な環境」、「最新の流行や娯楽・趣味を満たす環境」、そして「進学先や就職先といった自分の将来を考えることができる環境」でした。

このワークショップは2022年で3年目になります。2022年は子育て対策、若いカップルが生活しやすい環境づくりと掘り下げた対策が出されました。2023年のワークショップ実施に向けた準備は、既に藤田晴啓ゼミナール2年生が始めています。佐渡の地域の方々との活動は、これからも続きます。

本学と新潟市が連携協定を締結

 本学と新潟市は、新潟市内のSDGs達成に向けた市民意識の向上や行動変容の促進を目的とし、2022(令和4)年9月29日に連携協定を締結しました。連携事業では、「SDGs普及啓発」、「食品ロスに関する支援」などの活動を実施することとしています。

 連携協定締結式には、本学からは越智学長、山田准教授、国際学部学生6名が出席しました。新潟市からは中原八一新潟市長、三富新潟市理事・政策企画部長がご出席されました。締結式では、本学からは越智学長、SDGs活動で豊富な実績のある山田准教授の挨拶の後、日ごろからSDGsを学び・実践している学生を代表して国際学部4年星野さんと小池さんから「これまでの経験を活かしながら、SDGsネイティブでもあるZ世代らしい、新しく斬新な発想で新潟の今と未来に貢献していきたい」と取り組みに向けての力強い決意表明がありました。それに対して中原市長からは活動への期待が示されました。

締結された連携協定書を掲げる中原新潟市長と越智学長

連携協定締結式に参加した学生も加わり、記念写真撮影

連携協定第一弾は、食品ロス削減の取組みに

2022(令和4 )年11月1日に、本学関係者と新潟市関係者の間で打ち合わせを実施し、連携協定に基づく第一回目は食品ロス削減についての取組みとなりました。具体的な活動としては、これまで活用されてこなかった規格外野菜(古米、規格外などの理由で市場に出回らない野菜)などを、小売店や農家、家庭菜園から回収拠点へ持ち寄ってもらい、それをこども食堂に寄付するという流れとなります。初めての取組みであることから、周辺自治体の事例を参考にし具現化した「実証事業」として実施することとなりました。

事業実施の背景

打合せでは、事業推進に際し課題について話し合われました。課題の一つは、食品ロスの削減です。食品ロスの削減は、参加者一同共通の問題意識を持っておりました。この取組みを通じて得られたノウハウを、本学だけでなく新潟市内各所へ横展開することにより、さらなる食品ロス削減を達成したいという思いも確認しました。しかし、もう一つ課題として挙げられた「こども食堂への支援」については、そもそも「こども食堂」とは何か、ということも含めて、本学学生から前向きな質問がありました。

本学国際交流センターにて開催された連携事業における打合せ

こども食堂とフレッシュフードシェア

「こども食堂」とは、親子や、またはこども1人でも安心して訪れることができる無料、あるいは安い参加費で食事が提供される居場所の呼び名です。新潟市内では、こども食堂が50カ所程あり、その運営はボランティアだけでなく地域の様々な立場の大人たちが参加して成り立っています。

現代の日本は、家族が夜遅くまで働かなくてはならなかったり、経済状況が厳しい等により、家族で食卓を囲み、バランスの取れた多様な食物を食べる食事ができない家庭もあるようです。その体験を目指して活動しているのが、こども食堂です。

フレッシュフードシェア活動の一つに、これまで活用されていなかった規格外野菜や余っている野菜等を廃棄してしまうのではなく、それをこども食堂で活用してもらう、というのがあります。この循環を生み出すための活動、それはまさにSDGsの活動です。

場所は、本学本校の雪冷房施設(雪室)と新潟中央キャンパスに決定

 場所は、本学2か所で実施しました。田畑が広がる新潟市西区の本校(みずき野キャンパス)と、新潟市中心部の新潟中央キャンパスです。【実施報告はこちら】

 本校(みずき野キャンパス)の立地は、地元農家と隣り合わせです。一方、新潟中央キャンパスは、新潟市が進めている「にいがた2km」の都心軸エリアに面していて、周囲はオフィスビルや商業施設などがあり交通の便も良い場所です。

 本学における2か所での開催は、立地条件が明確に異なることから様々な観点からのデータが取れることが期待され、実証実験の実施地としてとても有効であると考えています。

 また、この取組みにより、後述するような効果も期待されています。本校は、地元農家さんが近くにいらっしゃるため、野菜を持参いただく際の車やトラック等の燃料が少なく済み、結果的にCO2削減につながることが期待される点です。新潟中央キャンパスは、こども食堂からの距離が比較的近いこともあり、こちらも野菜を取りに来られる際の車やトラック等の燃料が少なく済み、CO2削減につながります。

 なお、本校の実施拠点「雪冷房施設(雪室)」は、写真のとおり大きな倉庫です。この施設は、降雪時に大駐車場の雪を格納し、初夏~夏にかけて、雪室内の雪で冷やされた冷気を本校の冷房に活かす施設です。フレッシュフードシェア事業においては、この雪室を活用し(安全面の観点から雪格納時期以外は)野菜の寄付受付とその一次格納場所として利用します。

食品ロスの削減は、SDGsの推進にもつながります。本学では、SDGsの目標「1、2、3、11、12、17」を想定し、取組んでいます。

雪室内の様子
(雪なし時における受付の様子)

雪室内の様子(雪格納時)

いよいよ実施。想像以上の野菜等が集まる

 フレッシュフードシェア事業は、本学にとっても初めての試みでした。そのため、どのくらいの寄付が来るのか、他市の例を参考に計画する必要がありました。一例として、長野県のある市では、1回あたり約80kgの寄付が継続してあったとのことで、これを基準に進めていくこととしました。

 初の実証実験は、令和4(2022)年12月7・8・9日の3日間に渡り実施しました。【実施報告はこちら】

 寄付受付は、そのうち2日間(12月7・8日)に実施され、2拠点合計で合計811.1kgものコメ・野菜等が集まりました。12月9日に、全量こども食堂へ寄付しました。

 1回あたり80kg程度の量を想定していましたが、それを大きく上回り、2日間・2拠点で合計800kg以上も集まりました。畑の場所、お住まいの場所を伺うと、新潟市西区、中央区だけではなく新潟市全域から広く来ていただけたようです。受付を担当していた新潟市担当職員、本学教職員、学生一同、本事業がなければこれらが廃棄されていたかもしれないと想像すると、たいへん意義のある事業であると強く感じました。

受付した主なもの

・みずき野キャンパス(新潟市西区)

お米、野菜(カブ、大根、白菜、ネギ、さつま芋、他)

・新潟中央キャンパス(新潟市中央区)

お米、野菜(大根、キャベツ、カリフラワー、チンゲン菜、他)

寄せられたコメ・野菜等

寄せられたコメ・野菜等

野菜等寄付受付の様子

今後の展開について

 新潟市では、令和5年度以降に新潟市内全域に展開していけるよう計画していくとのことです。本学では、SDGsを推進していくためにも、今後も協力していければと考えています。

 本学のキャッチコピーは、「つなぐ つなげる つながる」です。フレッシュフードシェアの取組みは、農家さんとこども食堂とをつなぎ、結果として食品ロスを削減できるものです。本学ではフレッシュフードシェア寄付拠点の運営を通したSDGs実践の場、学生の学びの場として捉えております。以上の取組みは、まさに本学のキャッチコピーと合致します。この取組みを通して、農家さん等とこども食堂への橋渡し役として、“人と人とのつながり”が生まれることを、本学では期待しています。

学生の声

上田 綾 国際学部 国際文化学科

今回のフレッシュフードシェア事業への参加を通して、食品ロスの問題をより自分事として捉えられるようになりました。市場に出回らない野菜の量に驚くとともに、1つ1つの食材に価値があり、食材の大切さを感じることができました。市場に出回らない食材の量を知ったことで、食品ロス問題をもっと考えようと思うきっかけになり、かつSDGsは私たちの生活と密接に関わりうるということを再認識できる、貴重な機会になりました。

長島 朋花 国際学部 国際文化学科

今回の取り組みで集まった食材は、想像をはるかに超える量で驚きました。段ボールいっぱいの野菜を持ってきた方も、ビニール袋で持ってきた方もいらっしゃいました。私は、食材の量ではなく、行動に移してくださったことが大切だと感じました。こども食堂さんのように、食材を必要とする人は他にも沢山いると思います。食材は、廃棄されることなく、必要とする人の手に届いてほしいです。このような取り組みがもっと広がっていくことを願い、自分自身も行動を起こしていきたいと思います。

社会連携センター

本学の教育、研究活動の特徴を活かし。地域の皆様に役立つ学習の場を広く開放することを目的として、様々な公開講座、講演会を開講しています。文化・教養、ビジネス、資格、語学、パソコンなど年約200講座を開講し、さまざまな年代の方が受講されています。

本学教員の研究紹介と社会や地域との連携

2023年3月版

 本学は1994(平成6)年の開学以来、地域とともに、地域に開かれた大学にという理念に基づき、広く一般市民を対象にした公開講座や大学施設の会報を実施するなど、地域との連携をあらゆる機会をとらえ、積極的に進めてきました。この理念を具体化するために、本学に地域連携委員会(以下、当委員会)を教職員で組織し、地域社会のニーズを的確にとらえて地域連携事業を進め、実績を重ねて今日に至ります。

 当委員会の役割の一つに、「教育・研究広報」があります。大学と社会、企業・団体との連携についての具体的な情報は、予てより当ページにて発信しているところでございますが、一方で教員の研究分野についての対外的な発信は、より強化していく必要がある取り組みであると考えております。

 そこで当委員会では、教員の研究活動の情報を社会へ広く発信していくために「教員研究紹介集」を編纂し本学ホームページ等で公開することにしました。本学の国際・経営・情報システムなど多分野にわたる多様な教員の研究については、別冊子「新潟国際情報大学 研究者総覧」を毎年度発行していますのでまずはこちらをご覧いただきながらも、「教員研究紹介集」につきましては、できるだけ専門用語を多用せず平易な表現を使用することや図・写真を多用する方針としており、教員の研究情報をより分かりやすい形で発信する媒体という位置付けにしています。

 本学学長は、「研究者総覧」(2022)の巻頭言にて、「大学教員の仕事は3つあり、それは研究、教育、行政である。そこに4つめを加えるとすれば、みずからの研究成果を社会に還元することである」と述べています。従いまして「教員研究紹介集」の編纂方針は、教員自らが執筆した研究紹介について、最低限の体裁は整えつつもありのままに発信することとしました。先程述べたとおり、「より分かりやすい形で」とは言いましても、教員間においてその捉え方には差があります。それは教員の個性と言えるのではないかと思います。そういったところも念頭に置きながら「研究者総覧」と併せ読み比べていただき、本学教員の研究への理解を深めていただけたら幸いです。

 是非、これからも本学のこうした活動にご理解を賜りますと共に、ご意見、ご要望をお寄せくださいますよう、ここにお願い申し上げます。

2023年3月
新潟国際情報大学
地域連携委員会

学長

越智 敏夫 地域連携 研究紹介

国際学部 国際文化学科

臼井陽一郎 (準備中)
區  建英 研究紹介
小山田紀子 地域連携 研究紹介
熊谷  卓 地域連携 研究紹介
小林 伊織 地域連携 研究紹介
佐々木 寛 地域連携 研究紹介
佐藤 泰子 (準備中)
澤口 晋一 地域連携 研究紹介
申  銀珠 地域連携 研究紹介
鈴木 佑也 地域連携 研究紹介
瀬戸 裕之 研究紹介
中村  貴 研究紹介
藤本 直生 地域連携 研究紹介
堀川 祐里 地域連携 研究紹介
矢口 裕子 (準備中)
山田 裕史 (準備中)
吉澤 文寿 (準備中)
Julius C.Martinez 地域連携 研究紹介
Cynthia Smith 研究紹介

経営情報学部 経営学科

阿部  聡 (準備中)
今井 裕紀 研究紹介
内田  亨 研究紹介
木村  誠 地域連携 研究紹介
小宮山智志 (準備中)
佐々木桐子 地域連携 研究紹介
佐々木宏之 研究紹介
藤瀬 武彦 地域連携 研究紹介
藤田 晴啓 地域連携 研究紹介
藤田 美幸 (準備中)
山下  功 研究紹介

経営情報学部 情報システム学科

安藤 篤也 地域連携 研究紹介
石井 忠夫 研究紹介
宇田 隆幸 (準備中)
梅原 英一 地域連携 研究紹介
河原 和好 地域連携 研究紹介
桑原  悟 (準備中)
小林 満男 地域連携 研究紹介
近山 英輔 研究紹介
中田 豊久 (準備中)

社会、企業・団体との連携

新潟SKYプロジェクト

新潟SKYプロジェクトは、対象大学である新潟国際情報大学、新潟青陵大学、新潟青陵 大学短期大学部、新潟薬科大学及び新潟工業短期大学が相互に連携し、地域におけるプラッ トフォーム形成による資源の集中化・共有など、特色化・機能強化に向けた改革に、対象大学の計画等と連動させながら、全学的・組織的に取り組んでいます。

新潟市とSDGsの推進に向けた連携協定の締結

本学と新潟市は、新潟市内のSDGs達成に向けた市民意識の向上や行動変容の促進を目的とし、令和4年9月29日(木)に連携協定を締結しました。

本連携事業では、「SDGs普及啓発」、「食品ロスに関する支援」などの活動が中心となります。特に「食品ロスに関する支援」では、農家や家庭菜園で余ってしまった野菜などを、子ども食堂に届ける仕組みを共同で企画し実施します。

フジドリームエアラインズ、新潟県観光協会との包括連携協定締結

本学と株式会社フジドリームエアラインズは、「観光等による地域活性化」、「地域経済の発展にかかわる人材育成」を柱に、地域活性へ向けた企画提案や情報発信を行い新たな価値創造の実現を目指すことを目的とし、2022(令和4)年7月5日に包括連携に関する協定を締結しました。

また、本学は同様に、公益社団法人新潟県観光協会とも2022(令和4)年7月1日に包括連携に関する協定を締結しました。

本学、フジドリームエアラインズ、新潟県観光協会の3機関で連携し、学生目線の様々なプロジェクトに取り組んで行きます。

大光銀行・そら野テラスとの連携事業

新潟の地域産業・地域社会の持続的な発展に繋がる活動を行うため、2021(令和3)年7月に包括連携協定を締結した本学と大光銀行は、本学近隣の農業施設「そら野テラス」を運営しているそら野ファームと連携し、3者で「作る・食べる・つながるプロジェクト」を展開することとなり、本学と有限会社そら野ファームは2022(令和4)年3月2日(水)に覚書を取り交わしました。

2022(令和4)年3月3日(木)に実施した記者発表とワークショップの記事はこちらをご覧ください。

大光銀行との包括連携協定締結

2021(令和3)年7月15日(木)に株式会社大光銀行と包括連携協定を締結しました。
今後、互いの人的・知的財産の活用を図り、新潟の地域産業・地域社会の持続的な発展に繋がる活動を進めて行きます。

新潟三越伊勢丹、NST新潟総合テレビとの産学連携事業

2021(令和3)年度から新潟三越伊勢丹、NST新潟総合テレビと連携し、新潟という地域社会へ本学での学びを還元することと、新潟の次世代を担う人材の育成を目的とした産学連携事業「NWプロジェクト」を発足させました。
プロジェクトに合わせ、本学は株式会社新潟三越伊勢丹と2021(令和3)年6月12日(土)に覚書を取り交わしました。
実績はNWプロジェクトのInstagram(@nw_project2030)をご覧ください。

新潟県中小企業家同友会との連携協定(新潟SKYプロジェクト)

2019(令和元)年5月15日(水)本学新潟中央キャンパスにおいて、本学、新潟青陵大学、新潟青陵大学短期大学部、新潟薬科大学、新潟工業短期大学が連携して取り組んでいる「新潟SKYプロジェクト」と新潟県中小企業家同友会との連携協定に関する協定締結式が行われました。

本協定は、協働事業の実施及び教育研究に関すること、相互が実施する事業への協力及び支援に関すること、人材育成に関することを連携・協力の柱とし、各々が有する研究成果、人材等を活用し、緊密かつ組織的な連携、協力体制の充実を図り、人材育成及び教育研究の発展、新潟県内の地域産業の発展に寄与することを目的としています。

弥彦村との包括的連携協定

2017(平成29)年6月22日(木)に弥彦村と包括的連携協定を締結しました。人的・知的資源の交流及び活用を目的に、「教育・文化の振興」「人材育成」「地域づくり及び産業振興」「国際交流推進」を連携事業の柱に据え、相互の発展を目指します。
協定に基づく事業の一つに、2017年度から実施している「土曜学習モデル事業」が挙げられます。これは、弥彦村の小中学生に対して夏休み中の土曜日を利用し算数・数学を教えるもので、本学からは数名の教員が講師として担当しています。

魚沼市との包括的連携協定

2016(平成28)年5月30日(月)に魚沼市と包括的連携協定を締結しました。人的・知的資源の交流及び活用を図りながら、相互に協力して双方の活性化を進めています。

新潟市との包括的連携協定(新潟都市圏大学連合)

2015(平成27)年6月11日(木)に新潟市と本学を含む新潟都市圏大学連合は、包括連携協定を締結しました。

この協定は、新潟市と新潟都市圏大学連合(本学、新潟県立大学、新潟青陵大学、新潟薬科大学、敬和学園大学、事業創造大学院大学、新潟青陵大学短期大学部の7大学で構成)が相互に連携・協力して、各大学の持つ専門性や、知的、人的、物的資源を相互に有効活用することにより、コミュニティ・ビジネス等の分野において地元で活躍できるひとづくりや、学術研究の向上並びに活力ある個性豊かなまちづくりに寄与することを目的に締結したものです。