Berkeley

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中国のリアリティ――Ning Ying の映画から

2008年10月27日12:09

今週は、Ning Ying 監督の映画を3本観ました。

「For Fun」(1992年)
「I Love Beijing」(2001年)
「Perpetual Motion」(2005年)です。

若いタクシードライバーを主人公にした、「I Love Beijing」が、パワーがあって一番良かったです。

3回とも、上映後、監督本人が会場とやり取りする中で、理解を深めてくださいました。彼女は(これも例外なく)、とても気さくな人でした。

Ning 監督の徹底してこだわるのが、「リアリティ」です。政治における(中国共産党の)「ウソ」や社会の「建前」を徹底的にはぎとり、民衆の現実をフィルムに焼きつけようとします。

もちろん、あくまでNing 監督が感じている「リアリティ」なのですが、それを通じて現在の中国に生きる人々の深層部分が見えてきます。

あまりに急速な開発と近代化。これはその速度という点から言えば、日本の近代化のプロセスで、たとえば夏目漱石が直視し取り組んだ矛盾の比ではな いかもしれません。何というか、どうしようもなく、一方的、圧倒的に、そして徹底的に壊れていく「中国」の姿。作品中に象徴的に何度も現れる、廃墟のよう な巨大な建設現場。その巨大な廃墟のふもとで、もはや気が狂うしか、人間の正気を維持できない人々。

――この歴史的な傷は、もしかすると、何百年も癒えることはないのではないか。

作品を観ていると、そういう気がしてきます。

私には、Ning 監督の作品からは、「希望」は一切感じられません。唯一の希望は、今の中国が「おかしい」と感じ取ることができる芸術や知性がまだ残っているということだけです。

彼女が一番悩まされたのが「検閲」の問題だそうですが、その意味で、権力がもっとも恐れるのは「リアリティ」なのかもしれません。「中国脅威論」や「中国台頭論」など、ごくごく表層のできごとで騒ぎ立てるだけの議論から、私たちはそろそろ決別するべきかもしれません。