Berkeley

2008

May 22,25
Aug 30
Sep 1,2,3,5,7,10,11,15,17,19,24,26,27,28,30
Oct 1,2,4,5,7,12,14,16,18,20,23,26,27,28,31
Nov 1,2,3,5,6,7,8,10,13,15,16,17,18,20,21,23,
  24,26,27,28,29,30
Dec 1,2,3,4,6,9,11,12,13,14,17,18,24,25,31

→2009

黄昏の帝国で 10 Save Money

2008年11月21日16:51

ぼくは経済というのは本当によくわかりません。

ただ、「市場」というのは、「神の見えざる手」があるというアダム・スミスの仮定は基本的には正しいと思っています。

ジムでエアロバイクを漕いでいる時に、テレビのニュースを見ていると、金融や株式市場をレポートする記者やコメンテータは、今のアメリカ経済を語 る時に、「disaster(大惨事)」「mess(混乱)」「panic(パニック・恐慌)」「meltdown(暴落)」「collapse(崩 壊)」などということばを連発しています。日本でどのように報道されているかわかりませんが、これは1929年の世界恐慌の再来、あるいはそれ以上の危機 であると感じます。

ただ、1929年当時も実はそうだったかのかもしれませんが、ぼくが見る限り、市民生活は案外いつも通りで、目立った混乱は見られません。しか し、現在の危機は、そもそもアメリカ人たちがこれまで長い間、実体経済とはかけ離れた「分不相応」な消費をくりかえしてきた結果なのではないかとも思いま す。それはたとえば、アメリカ人の住宅を見るといつも感じることです。「なぜあんたの仕事で、あんたの予想される収入で、こんなホテルみたいな豪華な家に 住めるんだ」と、羨望も含めて思ってしまうことがよくありました。テレビのコメディドラマで出てくる太った警察官のおじさんの家族が住む家は、日本人から 見れば、どこかの大会社の社長宅のようです。もちろん、土地の値段など、家を建てるための条件は日米で根本的に違うのですが。

しかし、ここが経済の難しいところで、まずアメリカ人がたくさん消費することで、日本の車も売れるし、世界経済も活気づくのだということ。アメリ カ人の放蕩は、世界経済にとって必要であるかもしれないということがあります。論より証拠で、金融危機とアメリカの消費が落ち込んだために、アメリカ自動 車産業が音をあげてしまい、先日、上院の民主党は、約2兆4千億円(!)の税金を自動車産業への融資に振り向けるという「自動車業界救済法案」を提示した ばかりです。

しかし、素人なりに考えると、アメリカ人のこれまでのライフスタイルや、カジノのような経済は、いわば「神の見えざる手」によって修正を迫られて いるのではないかとも思います。「大惨事」や「崩壊」というのは、そもそも、アメリカの経済がいわば「砂上の楼閣」だったからで、実体をともなわない「バ ブル(泡)」だったからです。そういう土台をもたない、足腰の脆弱な経済は、所詮長くは続かないのではないかと思います。

最近、テレビのコマーシャルなどから盛んに聞こえてくるせりふは、「Save Money」です。しかし、これはアメリカだと、「割引」ぐらいの意味で、もはやアメリカの文化ともなってしまった刹那的な消費そのものを否定してはいま せん。ただ、「お金を節約するためにこっちの商品を買ってください」というメッセージにすぎません。

ぼくはテレビの前で、インスタントラーメンをすすりながら、「割引? お金を節約するだと?あったりまえだろ!」と一人で叫んでいます。大切なのは「お金の節約」ではなく、すべてのアメリカ人が人間として身の丈に合った節度 ある生活スタイルを実現することだと思います。無理かなあ。