Berkeley

2009

Jan 2,3,5,10,14,15,16,18,20,21,25,26
Feb 20,24,26,27,28
Mar 1,3,7,9,12,16,18,19,25
Apr 1,2,4,6,8,10,12,13,15,20,23,27,30
May 3,9,10,15,16,18,19,20,24,27,30
Jun 9,12,14,16,18,19,21,25,26,27,28,30
Jul 2,5,7,12,13,14,19,20,21,27
Aug 8,9,25

→2008

オバマ大統領施政方針演説

2009年02月27日13:11

先日24日のオバマ大統領の施政方針演説を、再度全文読み返しました。

就任演説の時にも印象的だったので書きましたが、これほどの長期にわたる<歴史>の中で、自らの権力の役割を客観的に位置づけることのできた政権 は、これまであったかと思います。少なくとも、現存する世界中の政治権力の中で、その点はオバマ政権のもっとも際立った特徴であると言えるでしょう。演説 の中で一番目をひいたのは、以下の部分です。

「言い換えれば、我々はこれまで、目先の利益がしばしば長期的な繁栄より重んじられ、次の支払日、次の四半期、次の選挙の先を見ない時代に生きて きた。黒字は未来に対する投資の機会ではなく、富める者への富の移転の口実になってしまった。手軽に利潤を得るために規制は骨抜きにされ、健全な市場は犠 牲になった。人々は返す余裕がないのを知りながら、不良貸し出しであっても売り込んでくる銀行や貸金業者から金を借りて家を買った。この間、必要な議論や 困難な決断は常に先送りされてきた。つけを清算する日が来た。我々の未来に対する責任を取る時だ…。」

おっしゃる通り。ぼくはこの分析にまったく同意します。そして彼の演説には、繰り返し、「後世への責任」ということばがみられます。彼はどうやら <歴史>に生きようとしている。後世の人たちに「応答」しようとしている。そう感じます。しかし振り返って、そういう指導者を、そういう政治文化を、たと えば私たち日本人は現在享受していると言えるでしょうか…。

さらに第二番目の特長として(これもこのような長期的な視点から派生するのですが)、エネルギーと医療と教育問題への優先的な着目が挙げられま す。加えて、明確に「防衛費の削減」を宣言しています(もちろん慎重な言い回しで)。簡単に言えば、軍事予算を削減し、再生可能エネルギー開発と医療制度 改革、教育に予算を回すこと。また、「年間収入が25万ドル(約2400万円)未満の世帯は、10セントすら税金が増えない」と約束しているように、現在 の法外な金持ち達から税金をとり、中産階級以下に再配分するということ。それがこの演説で謳われている精神です。

エネルギーと医療と教育問題。この三つはこれから世界のいかなる国家にとっても最重要の課題になると思います。その問題への着手をアメリカはもう 始めようとしているということです。「石油に依存することをやめる国家になろう」とアメリカ大統領が言っている…。画期的で何だか信じられないくらいで す。未だ原子力発電をどうするかという問題は残るものの、アメリカが国をあげて再生可能エネルギーの開発に取り組もうとしているという事実を私たちはどう 受け止めればいいでしょうか。

こういうドラスティックな改革を、ホワイトハウスに権限が集中する大統領制の利点を生かして推進していく。文字通りの「政治主導」です。演説も確かにうまい。具体的で感動的な事例と、誰にでもわかる説明。しかし、一番大切な事は、上記の二点に要約できると思います。

外交については、あまり多くを語っていません。「新たな関与の時代」と言っていますが、前ブッシュ政権とは一転し多国間主義であるということはわ かるものの、それ以上の画期的な政策は浮かんできません。しかし、そもそも前にも書いたように、この政権は、元来、アメリカのアメリカによるアメリカのた めの政権なのです。そしてそれを支えたのも「ひとつのアメリカ」というナショナリズムです。

私たちは誤解してはならないでしょう。過度に期待したり、過度に絶望したりするのは、政治的に幼稚です。

オバマの演説から私たちが学ばなければならない事は、まず私たちが、自分たちの国の中に、このような施政方針演説を語れる指導者を生み出さなければならないということです。

もうアメリカは第一歩を踏み出したということに改めて気がつかなければなりません。「オバマはかっこいい」とか、「オバマはやっぱりだめだ」とか言う前に、やるべきことがあるということです。