新潟国際情報大学 佐々木寛 研究室
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Lecture担当講義

平和学(2年前期共通専門科目)

授業目的

平和学は「ジェノサイド」や「世界戦争」といった、 20世紀の暴力をめぐるさまざまな人間の経験から生成し、展開を遂げてきた学問運動である。 それゆえ平和学は、一貫して、既存の社会構造や世界秩序を批判的に見つめ、その代案(オルタナティブ)を模索しつづけてきた。
そしてまた平和学は、既存の政治学・社会学・経済学などの社会科学のみならず、 時には自然科学をも横断した包括的な認識枠組みから問題の核心に肉迫し、むしろ既存の知識体系自体に重大なインパクトを与えてきた。

講義の前半では、戦争と平和、あるいは暴力の問題そのものに関する知の蓄積を広く「平和学」の中に位置づけ、 それら一連の思想や理念、理論などを、それらが生成してくる歴史的な背景とリンクさせながらふりかえってみたい。
さらに後半では、現在の「グローバル化」にともなう新しい問題群が平和学につきつける挑戦の意味を明らかにしたい。
平和学がこれら問題群といかに格闘してゆくのか、またなぜ平和学という広い枠組みでなければこれらの問題に対応できないのか、 つまり平和学の<批判的構想力>を今後どのように鍛え上げてゆくべきなのかについて、共に考えてみたい。

各回毎の授業内容

新鮮な題材を多く取り入れたいため細目は限定しないが、以下の内容には触れる予定である。

  1. 「平和」とは何か ―― 平和学前史
  2. 平和学の生成 ―― 20世紀の時代経験Ⅰ(ジェノサイド)
  3. 平和学の展開 ―― 20世紀の時代経験Ⅱ(構造的暴力)
  4. 世界秩序の構造変動と平和学の新地平
  5. 新世紀の平和学 ―― 21世紀「平和秩序」形成のために
  6. 日本の平和主義の課題と平和学
  7. 地球環境問題と平和学

成績評価方法

しばしば講義の最後に、コメントカード(質問やコメント、感想を書いてもらう)を作成してもらい、 それらは講義の改善に役立てるだけでなく、受講者の参加姿勢を見る材料とする。
基本的に最終筆記試験の成績によりすべての評価を決定し、出席も重視しないが、このコメントカードの内容は成績に加味する。
つまり、試験当日万一やむをえない事情で十分解答できなくとも、日常的な参加姿勢は成績に加味される。
また、試験は、個別的な知識よりはそれをもとにした思考力(学期中にどれだけ考えたか)を重視した問題を出題する。

教科書・参考文献

教科書

◎高柳先男『戦争を知るための平和学入門』(ちくまプリマーブックス)

◎高畠通敏『平和研究講義』(岩波書店)

◎『AERA Mook 平和学がわかる。』(朝日新聞社)

参考書は、授業中、それぞれのサブテーマに即して随時指定する。

必読参考文献の一例として、岡本三夫 横山正樹 編『平和学のアジェンダ』(法律文化社)、日本平和学会編『平和研究 第26号 ―― 新世紀の平和研究

(早稲田大学出版部)、 J.ガルトゥング『構造的暴力と平和』(中央大学出版部)、U.ベック『危険社会』(法政大学出版局)を挙げておく。

受講にあたっての注意事項

平和学のアジェンダは常に展開するのであり、参加者は最終的には自分なりの「平和学」を構築してほしい。
その意味でも参加者からの質問および討論は大歓迎である。