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理事長祝辞急がず緩まず焦らずぶれないが求められます。いよいよその本番に船出する皆さんには、どうか強い精神を持って運命に挑戦し続け、いつか使命を見出して欲しいと思いこの言葉を贈ります。今、世界経済は成長力の鈍化や経済のデフレ化という課題に悪戦苦闘中で、欧州と日本ではマイナス金利という歴史上初の政策金利まで発生しています。これは資本主義が成熟してしまい、地球上にはもはや大きな成長をもたらしてくれるオアシスはなくなってきたと指摘する経済学者もいます。一方、こうした需要不足の経済の低成長化は限りなく金融問題であるので、中央銀行の異次元の金融緩和によりデフレマインドを克服し、低成長から脱却しうるとする考えもあり、世界の先進国ではこうした考えに基づき、超金融緩和政策をとり、先ほど申しあげたようにマイナス金利政策まで生じています。そこには持続的な経済成長を確保すべきという考えがあります。でも最近では経済学者の中からも、「いつまでも成長を続けられるのか」とか「人々を幸福にする成長であるかが重要」といった主張が聞かれ、「幸福の経済学」というテーマでの研究がなされています。漸く本来の経済学の目的に向かい始めたようです。しかし人々の幸福のためのもう一つの重要な要件である平和、すなわち戦争のない世界の構築ということでいえば、残念ながら事態は近年大きく悪化、緊張が高まっています。特に中東・アフリカにおける民族・宗教対立などからIS問題やテロ、難民という非人道的かつ深刻な悲劇が広く発生しています。新自由主義とグローバル化は国家間だけでなく国内的にも所得格差の拡大を生み、米国大統領選挙に見られる「1%支配」が「99%不満」を発生し、不安定な社会を生み出しているようです。欧州復興開発銀行の初代総裁を務めたフランスのジャック・アタリは「米国の支配力低落はGゼロの政治情勢を招来し、歴史上大国ローマ帝国が滅んだ時と同じような不安定な状況を生み出している」と表現しています。厳しい現在の政治・経済状況を解決する力を今の先進国は持っていないのではと言っているわけです。そうだとすると、皆さんは歴史的な大きな困難と変動の荒海に乗り出すのかもしれません。だからと言ってたじろいではいられません。賢い思考力・判断力と大いなる勇気をもって挑戦しなくてはなりません。いつの時代でも難しい課題はありました。若者はいつも時代に立ち向かって切り拓いていったのです。今度は皆さんの番です。   最後に私から皆さんにお願いがあります。それは社会人として良き職業人、良き家庭人と併せて「よき地域人」たれということです。現在盛んに「地方創生」ということが言われています。人口減少が背景にあります。新潟県はそのなかでも人口減少新潟国際情報大学の第19回卒業式にあたり、設置者の学校法人新潟平成学院理事長として卒業生の皆さんに心よりお祝いを申しあげます。併せて多数ご出席いただきましたご父母の皆様、誠におめでとうございます。年度末のたいへんお忙しい中ご参列           数が大きく、危機感が増しています。本学の卒業生の多くは卒業後も本県内で生活してゆくわけですが、自分たちが住む地域を愛し、地域人として自らが住む地域を良くしてゆくことにも立ち向かって欲しいのです。「地域で生きる」ということにも大きな価値を持った人生を送ってください。それは良き友人や豊かな人間関係を生み出し、自分の人生の夢を実現しようとする時、きっと力となってくれるでしょう。明日からは、自分の足だけで立って、前を向いて自分の手で未知なる道をかき分けて進んでゆくしかありません。全力を尽くした人生こそ納得出来る人生です。納得のゆく人生を送ってください。私が大切にしている茨木のり子の詩「自分の感受性くらい」にはこう書かれています。「(前半略)  初心消えかかるのを  暮らしのせいにするな  そもそもが  ひよわな志しにすぎなかった    駄目なことの一切を時代のせいにはするな  わずかに光る   自分の感受性くらい   ばかものよ」先月新潟で知的障害者のスポーツ大会「スペシャルオリンピックス」が開催されいただきましたご来賓の皆様たいへん有難うございました。卒業生の就職をはじめ日ごろなにかとご高配をいただき重ねて厚く御礼を申しあげます。さて、263名の卒業生の皆さん、今日この日なにを思い考えていますでしょうか。尊厳の放棄自分で守れました。私は実行委員長を務めたのですが、参加してくれた多くのボランティアから「支援のために参加したけれど、あの一生懸命な姿と笑顔に接し、逆にこちらが癒され元気を貰った」という感想を頂きました。私もこの大会期間中、彼らと接し自分がどんどん優しい気持ちになってゆくのを感じました。自立するということは「他人に頼らずに生きてゆくだけではなく、困っている人を助けてあげる」ということです。優しい人になってください。最後に卒業後も本学に想いを寄せてください。私は本学の目標は「地域に必要な大学であり続ける」ことだと思っています。それはこの地域で活動している本学の卒業生諸君にとって、誇りの持てる母校であり続けることでもあると思います。それには卒業後も皆さんと大学がつながっていることが大切です。同窓会活動など、機会を見つけて大学とつながっていってください。暖冬だった冬が早々と終わり、みずき野に春が訪れてきました。今年も卒業生を送り出し、新入生を迎える春が訪れました。大学は毎年春に卒業と入学を繰り返しながら、歴史を刻み伝統を育んでゆきます。それぞれが春とともに新たな人生の出発を迎えます。この春社会人としての人生に出発する皆さんの前途に幸多かれとエールを送って私のお祝いの言葉といたします。春から夏、秋から冬へいろいろな表情を見せてくれる弥彦山、角田山をのぞむ「みずき野」のキャンパスでの思い出は尽きないことと思います。私は昨年の卒業式で、宗教上の絶えない争いや地域間の紛争のこと、多発するテロの脅威や想像をこえる自然災害、そして未来にわたって抱え続けなければならない福島の原発のことなど、つらい時代にあっても、強い心と覚悟をもって、これからの長い人生を生き抜いてほしいと、皆さんに訴新潟国際情報大学 学報 国際・情報 平成28年4月発行 2016年度 No.114学校法人 新潟平成学院理事長 星野 元

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