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研究テーマが飛び込んでくる環境私の研究テーマチンパンジーや(人間の)赤ちゃんを対象に、世界をどのように見て認識しているのかに関する実験的な研究を行ってきました。進化の隣人、チンパンジーとの比較から人間の特徴を明らかにし、赤ちゃんとの比較からその発達的起源を探る「比較認知発達科学」という学際的な立場から、人間の「こころ」をより深く理解したいと考えています。「ものを見る」という行為はあまりに当たり前で、ふだん意識しないかもしれませんが、ここで、単純な例を挙げて考えてみたいと思います。目の前に二つの円があるとします。片方の円は、上側が明るく、下側が暗くなるようなグラデーションが付けられているのに対し、もう一方の円は、逆に上側が暗く、下側が明るくなるようなグラデーションが付いています。このような図を授業などで見てもらうと、ほとんどの人は、左の円は「膨らんで」見え、右の円は「へこんで」見えると瞬時に答えます。実際には、どちらも平面に描かれた円ですが、陰影が付けられると立体的に見えます。それでは、なぜ、グラデーションの方向を変えるだけで、円が膨らんで見えたり、へこんで見えたりするのでしょうか。実は、人間は陰影から物の形を認識するときに、「光源は一つ」で「上方から照らされる」という前提をもって見るためです。したが、最近、あらためて人間の赤ちゃんに接すると、似ているようで全く違った行動に気づかされることがありました。そんな新たな「発見」も、これから形にしていきたいと思います。これまでの我々の研究から、このような光源に関する前提は、人間だけでなく近縁な霊長類にも共通して見られることが分かりました。また、このような能力が、人間もチンパンジーでも生後半年までに発達することから、光源に関する知識は生後の経験によって徐々に獲得されるというよりは、初期の発達過程に組み込まれたものだと考えられました。最後に、チンパンジーと赤ちゃんに共通すること。それは、言葉を話さない相手だということです。すべての研究で、行動を手がかりに、いかにこころを推測するかという問題に挑戦しています。これまで、チンパンジーの子どもの誕生、成長を10年間観察してきま情報システム学科・講師 伊村 知子新潟国際情報大学 学報 国際・情報 平成24年10月発行 2012年度 No.3オーストリアグラーツ工科大学のクリスチャン先生左から私、中国北京交通大学の王先生、 6 平成23年8月下旬から約1年間にわたり、オーストラリアの西オーストラリア州の州都パースにあるカーティン大学で研究を行ってきました。オーストラリアは日本のほぼ真南に位置し、カーティン大学のあるパースは、シドニー、キャンベラ、メルボルンに次ぐ第4の都市です。パースは、「世界一美しい街」とも言われますが、最近では主要産業のマイニング(鉱山業)の好調により、物価(特に住宅)が非常に高騰し、住宅の供給不足が大きな社会問題の一つとなっています。このパースでとにかく最初に苦労したのがアパート探しと娘の小学校探しでした。そしてようやくパース生活にも慣れた11月、一斉に咲き出した紫色の花「ジャカランダ」の美しさにうっとりし、日本の冬にあたる1月下旬から2月にかけては、40℃を超える暑さに耐える日々を過ごしました。 私の研修機関であるカーティン大学は、総学生数が47,164名(平成24年2月15日現在)で、その41.3%にあたる19,496名が国外からの留学生です。なかでも、カーティン大学ビジネススクール(CBS)は、学内最大の学生数を誇り、オーストラリア屈指のビジネススクールでもあります。私の研修先であるこのCBS情報システム研究科は、メインキャンパスであるベントレーキャンパス内にあり、自然と国際色豊かな恵まれた環境で研究活動を行うことができました。 カーティン大学に到着した初日から驚いたのは、いろんな先生たちがいろんな研究テーマを持って私の研究室に飛び込んでくることです。また、大学を一歩外に出ると、見たこともない動植物、さまざまな国の言葉と文化、アボリジニーの文化と歴史、日本とは大きく異なる小学校の教育と行事、そして交差点には「ラウンドアバウト」…、と私の好奇心をかき立てるものであふれていました。「たくさんのシミュレーションモデルをつくろう!」と張り切って日本を出発したのですが、結局のところ、ピーター教授との「IPv6の日豪比較」、ヘンツ教授との「ICEA(International Classification of Educational Artifacts)の研究」、そしてクリスチャン教授との「仮想空間『セカンド・ライフ』の教育現場への活用方法〜欧米とアジアの違い〜」を研究し、さらに身近な好奇心に探求心を注いでいるうちにあっという間に帰国の日を迎えてしまった感じです。 CBSは研究活動も非常に盛んで頻繁にスタッフセミナーが開催され、学内外・国内外の研究者が毎週のように熱い議論を重ねていました。今年4月には、私自身が「Disaster Management and JIT of Automobile Supply Chain」というテーマでセミナーを開催し、震災によって見えてきた日本の自動車産業の構造的変化について解説をしました。正直なところ、セミナーに向けた資料づくりの日々、セミナー当日のあの何ともいえない雰囲気と緊張感と不安感を思い出すと、今でも胃のあたりがキリキリと痛みます。 私と娘の経験した(ここには書ききれないほどの)たくさんの喜怒哀楽を、いろんな方々と共有できたらと思いますので、いつでも気軽に声をかけていただければと思います。 最後に、CBSの情報システム研究科長であるピーター・デル教授は、情報システム学科のある本学に非常に関心を持たれ、教員・学生の相互交流の機会を強く望んでおられました。今後、両校の相互交流の構築が図られますことを切に願っております。情報システム学科・准教授 佐々木 桐子チンパンジーや赤ちゃんから見た世界豪・カーティン大学での研究を終えて
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