マルチレベル分析(回帰)とは、多水準のカテゴリーごとで推定値(偏回帰係数・切片) が異なるモデルの分析である。以下の式1〜式6に関する説明は、Goldstein(1999・1995) 、Goldstein, etc.(1999)を参考にした。 従属変数をy、独立変数をx、切片をa、傾きをb、残差をeとすると、一般的な回帰 式は以下の式1のように表される( iは、個人を表し、1〜nの値をとる)。 yi=a+bxi+ei 式1 ここで2レベル(個人レベル−市区町村レベル)のマルチレベルの単回帰分析について考 えてみよう。切片・偏回帰係数にマルチレベルを仮定する。yi、a、bxi、eiの 後の添え字は各市区町村を表す。一般化するときは、これをjで表す(1〜mの値をとる)。 まずは、個々の地域ごとに回帰式を立てるところから考えてゆく。 yi1=a1+b1xi1+ei1 ,yi2=a2+b2xi2+ei2 , ...,yim=am+bmxim+eim これを一般化すると式2が得られる。 yij=aj+bjxij+eij 式2 添え字ijは「j番目の市区町村のi番目のサンプル」を表している。 ajはj番目の市区町村の切片を表しており、全地点の切片の平均aと、j番目の市区町 村レベルの残差ujにわけられる。またbjは、j番目の市区町村の 偏回帰係数を表しており、全地点の偏回帰係数の平均bと、j番目の市区町村レベルの残 差vjにわけられる。 aj=a+uj , bj=b+vj 式3 式2に、式3を代入すると以下の式4が得られる。 yij=a+bxij+uj+vjxij+eij 式4 a 、uj、eijをbxij やvjxijのようにパラメータと変数を分けて表示するために、 すべての値が1の変数x0を導入する。またパラメータには、 変数xの番号に対応した添え字をつける。さらに残差ではない固 定部分のパラメータはβで表す。 yij=β0x0+βxij+u0jx0+vjxij+e0ijx0 式5 x0、xijの項を整理し、以下のように書き換えよう。 yij=β0ijx0+βjxij β0ij=β0+u0j+e0ij βj=β+vj 式6 u0j、vj、e0ijは、残差のパラメータであり、ランダ ムパラメータと呼ばれる。それに対しβ0、βは固定パラメータと呼ばれる。 式1では、一般的にOLS(ordinary least square)を用いてパラメータの推定を行なうが 、マルチレベル分析においては、OLSにおけるeの仮定を満たしていないために、その他の 推定方法が用いられる。本稿ではIGLS(iterative generalised least square)を用いて いる。