質問・意見にお答えします(感想は割愛しました。答え忘れた質問、またはさらに質問がありましたら メールでお願いします。公平をきすため、このwebページでお答えします。) メール等でいただいた新しい質問 Q:レポートに関する質問なのですが、「情報化社会」の何について書けば良いの かが未だっきり分かっていないのです。 情報化社会について自分が取り組んでいる事だけでなく、それがどのように社 会に役に立つかを書くのでしょうか? A:講義でお話したとおり、課題は以下のとおりです。 掲示もしてあります・ホームページにも書かれています。 「あなたの研究が“新しい情報化社会(光を失わず、闇を減らす。条件は講義で示した とおりです)”にどのように貢献するか考えよう!」 Q:小宮山のレポート例では表1のような章立て構成になっていますが、このとおりにしないといけないのですか? A:そのとおりにしないといけないことはありません。問い(どんな問いでどんな目的で、どこが今までの研究と 違い、あなたのオリジナルなのか)、仮説・検証方法(問いに対してあなたの主張は何か、どのように根拠を示す ことが可能なのか)、予想される結論(どのような結論が予想され、研究目的に対しどのような意味を持つのか) が書かれていれば構いません。 表1:章立て構成 問い 研究目的 既存の研究との関連 仮説・検証方法 仮説 検証方法 予想される結論 レポートによってある部分が長くなってしまったり、比較的短かったりすると思います。例えば「既存の研究と の関連」が長くなってしまったのなら「章」にして、章の中を「節」で区切ることが考えられます。また順番が、 変えることはあります。一般的には表1の順番で書くものなのですが、章立て構成を工夫することもあります。 例えば仮説にたいへん高いオリジナリティがあり、自説を説明した後、既存の研究との関連を述べることもあるで しょう。問いは、すでに問われているが、自分の考えた仮説はまだ提唱されいない。そして自説を「検証する 意味」があることを述べるタイプの論文の場合、既存の研究の前に自分の仮説を述べてしまった方がわかりやすい ことがあります(既存の研究の仮説を先に述べて、その後、自説を述べるのが、典型的な章立て構成ですが、ど ちらでもありえます。ケースバイケースです)。 章立て構成が若干変わっても、問い(研究目的、既存の研究との関連)、仮説・検証方法)、予想される結論 は必ず書きましょう。大学生のレポート・論文ではたいへん重要なことです。学校(専門学校・高校・中学・小 学校)は、誰かが解明した情報を覚える(消費する)ところでした。大学は情報を生産(研究)するところです。 新しい情報を生産したと主張するためには、自分の研究は、A)何に役立つのか、B)どこが新しいのか、C)そして 正しいことを明示しなければなりません。A)何に役立つのかは「研究目的」で、B)どこが新しいのか「既存の研究 との関連」で記します。C)正しいことを、他の有力な可能性(仮説)と自説を比較しながら仮説・検証で述べ、 結論付けます。 問いの探し方について、5月8日にお話しました。上記の構成と関連づけてお話しましょう。情報化社会だからこ そ、私たちの私たちによる私たちのための研究が可能なことを論じました。物理法則は、どこの国でもいつの時代 でも変わりません。しかし“情報(生物誕生以降の物理法則以外の秩序原理)”の研究は、社会が異なれば結論が 変わってきます。講義で示した宇宙服の例を思い出して見よう。ポアチエ氏が作成した宇宙服は、万人向けでは ありませんでした。ハチたちがすでに使用している宇宙服の方が小型・軽量でユビキタスコンピューティングの面 でも進歩しているかもしれません。しかし長時間宇宙空間で作業する労働者のことを考えると、ポアチエ氏の宇宙 服はコンタクトも直せるし、自分のノートパソコンを普段と同じように使用でき、また母船に帰らなくてもちょっ とお菓子食べて休憩することもできます(B「既存の研究との比較」)。ニーズを捉え設計(情報)すれば、既存の 研究と勝負できるんです。日本の研究者の多くは東京にいます。今の新潟のことなら私たちの方が詳しいです。現 代の若者のことも私たちの方が詳しいです。そのかわり、自分の研究の良さは自分で明示する必要があります(A 「研究目的」)。 新潟の例でお話しましょう。例えば、クルマ社会(モータリゼーション)に適応した郊外の大きな駐車場を備えた スーパーマーケットが新潟でどんどん増えています。確かに新潟は日本有数のクルマ社会の進んだ都市です。しかし 同時に高齢化もこれから進むでしょう。はたしてモータリゼーション型店舗と昔ながらの住宅地隣接型店舗のどちら が発展するのでしょうか。既存の研究を調べるとモータリゼーション型店舗に関する研究はあります。しかしさらに 社会が変化して高齢化が進んだときにどちらの店舗がニーズにあってくるのかは、十分にはまだ研究されていません (数年前に本学の先輩が研究しました。そのころはまだほとんど研究はありませんでした。最近盛んに研究され始め ています)。 クルマ社会で、かつ高齢化社会が進む新潟に暮らし続ける人々にとってはとっても重要な研究です。東京は公共交 通が発展しまた駐車場がバカ高いので、クルマがない方が便利なぐらいです。東京では悩まなくて済む問題なのです。 先日のクローズアップ現代で高齢化社会での流通業のあり方について議論され提案したが、まさに私たちが考える べき問いなのかもしれません。 もう一つ例を出して説明しましょう。7月10日に学生評価アンケートのお話をしました。本学の学生評価システム は日本のほかの大学でも採用されているスタンダードなものです。学生評価の発祥の地、アメリカのものをほぼその まま使用しています。アメリカで成功した情報システムが日本でも成功するならば、私たちの研究の余地はありませ ん。しかし同じシステムでもアメリカの学生と日本の学生では、どのように情報を認知し、評価し、行動するかが違 うので、同じように機能するとは限らないのです。 「大学」の授業評価なので、一番重要なことは「講義が学生一人ひとりの研究に役に立ったか」です。学生は 講義が自分の研究を進めていくのに役立つかどうかを判断するために講義概要を読みます。ですから学生評価の一番 初めの項目に「講義概要と授業内容は合っていましたか」という項目が来ます。 自分の問いに役立つという基準で、大学・講義・ゼミを選択する学生にとってはもっとも重要な項目となりますが 自分の問いを持っていない学生にこの項目で質問しても、測るべきものが測れません。どんなに集計のためのコン ピュータシステムが素晴らしくても、アメリカと日本ではコンピュータシステムを取り巻く社会(システム)が 異なるので、目的を果たせないのです(B「既存の研究との比較」)。 これはとってもありがたいことです。アメリカで成功しても、日本では成功しないからこそ、私たちの情報を生産 する(日本の大学向けの学生評価システムを創造する)仕事ができるのです。しかもアメリカの先駆者たちよりも 日本のことならば、私たちの方が詳しいはずです。 情報は、私たちの認知や評価に影響するだけでなく、私たちの行動(文化)を変えうることをお話しました。この 学生評価アンケートを変えることで、文化が変わるのです。この学生評価アンケートも、いまのままでは「問いを もって主体的に講義を聴く」という行動に結びつくとは思えません。むしろ講義の形式の項目が多いのでこのアンケ ートを繰り返し回答する学生さんは、「他人から与えてもらう」ということばかり意識するようになってしまうかも しれません。 ではどのように変えたらいいでしょうか。理想的には講義の初めに皆さんの研究計画と講義との関連についてレポー トしてもらい、教員は受講学生の研究を認知した上で、研究に役立つように講義を行なう。そして学生評価アンケート では、各自のレポートのとおり研究に役立ったかを評価してもらえばいいでしょう。情報社会論でいえば、講義内容は 「私たちのさまざまな行動が、情報化社会の光と闇を形成している。どのようにしたら光を失わず闇を減らせるかを 考える」ことなので、みなさんの研究が情報化社会にどのように貢献できるかをあらかじめレポートしてもらい、 さらに皆さんの研究が社会に光を放ち、闇を減らせるように、私は講義すれば良いのでしょう。 しかしそのためには、講義が始まる前に教科書ぐらいは読み終えておかなければなりません。ただ教科書を理解する だけではなく、自分の研究が情報化社会にどのような影響を与えるか考える(自分の研究を教科書の具体例として 捉える)ことができないといけません。 この課題は授業中で行なってきたどのグループワークよりも難しいです。半年前ではいくらなんでも難しすぎます。 だから、初めにプラネテスを例に、情報化社会について考え、そして情報化社会だからこそ私たちの研究ができること を考えてもらいました。そして教科書についてグループワークを通して、私たちのどのような行動が情報化社会の光を 支え闇を増やすのか考えてもらいました。 そして今回、「あなたの研究が“新しい情報化社会”にどのように貢献するか考えよう!」という課題を満を持して 考えていただくことにしました。 “大学生”になるための方法は、お伝えしました。あとは皆さんが後期から実践してください。まだ、1年半、ありま す。時間は十分に残されています。皆さんの活躍に期待しています。今後のために皆さんの課題に対するコメントを ホームページで公開することを検討しています(名前は伏せます。研究内容から本人はわかると思うので)。 授業後の質問・意見票での質問 Q:楽しむことをあきらめて金を稼ぐことに没頭している殺伐とした社会をどう良くするか。平和学だ!!と思います。 A:平和学は学際的な学問です。学際的な学問とは、さまざまな学問をつかって、対象(平和学の場合は平和)を 研究する学問です(国境を越えるのが国際で、学問の領域を超えるのが学際です)。情報文化学を平和研究にお役立 ていただけたら幸いです。卒論楽しみにしています。 Q:レポートで自分の問いについていろいろと考えて見ました。その問いについての解決方法がなかなか思いつかず難しいと 思いました。 A:研究計画で結構です。私の具体例もそうですが結論は“予想される結論”で構いません(あえて具体例は研究計画に しました)1年かけてゆっくり解決方法はお考えください。私でお役に立てる部分はご相談に応じます。 Q:課題の意味がわかりません。(システム他2名 文化:1) たぶん、Wさん、わからないと思う。講義で私がお話したトレーニングを行なっていないと、課題の意味すら わからないはずです。第2回の講義で配布した資料(苅谷剛彦 1997)のとおり、日本型の暗記教育や感想文教育 を前提にしていたら「あなたの研究が“新しい情報化社会”にどのように貢献するか考えよう!」という 意味は、わからないよね。高校までの教育とは、発想がまったく違うんです。問いを探し解決するトレーニング そしてそのトレーニングの意味(“新しい情報化社会”の創造)をこの講義ではお話し、また実際にグループ ワークを通して実践してきました。 Wさん、オリジナリティ高いので、トレーニングすれば暗記型では目を出さなかった才能が、溢れ出てくる はずなのですが、今回もトレーニングしなかったよね。ほとんど授業開始から寝てたか、携帯いじってたよね。 私もさっぱりやる気の出ない時期ありました。Wさん、いつか動き出してくれると信じています。動き出したとき、 私が必要ならぜひお声をかけてください。できるかぎりサポートします。 Q:最終レポートの内容すごく難しそうだった。(システム:13 文化:3) A:テキストに入る前(5月8日までの講義)でお話したトレーニングを、その後の講義で実施していれば すでにあなたのノートに今回のレポートが完成しているはずです(講義の内容を移しているだけの暗記型の ノートでは役に立ちません)。あとは編集するだけですので、数時間で、できますよ。 第2回の講義で配布した資料の「アメリカの大学ですぐれたレポート」(苅谷剛彦 1997)によると アメリカの大学レベルなら、簡単すぎて最終レポートとは言わないかもしれませんね。 Q:授業評価アンケートまで(具体例として)考えていなかった。 A:まさにアメリカで良いシステムが日本でよいシステムとは限らないという情報化社会の 典型例ですね。問いの探し方の参考にしてください(5月8日講義参照)。私たち新潟県民 または若者だからこそ、できる研究があります。新しい情報をつくるチャンスはたくさん あります。 Q:最初に自分の問いをもつ必要があることを教えて欲しかった。 A:第2回の講義で配布した資料の「アメリカの大学ですぐれたレポート」(苅谷剛彦 1997)の説明で お話しました。聞いたことすら忘れちゃうって幸せなんだけどね。私もよく、テレビで映画見てると 最後の方になって「あ、この映画2度目だって」気がつきます! いつも新鮮でいいのだけれど... こればっかりは覚えるとかじゃなくて、習慣にしよう。残りの1年半は、あなたの問いとの関連を意識して 授業を受けてください。 Q:最後の「何を仮説にするか」は最初の授業で言うべきか。 A:『現代社会の理論』には入る前にお話した情報化とは何かというところでは、物理学万能の時代でなく、 情報化社会だからこそ私たちの私たちによる私たちための研究が見つけられることをお話しました 東京で成功したシステムが新潟で成功するとは限らない。いままで成功したシステムが、いまの若者でも 成功するとは限らない。新潟や今の若者のための独自の仮説が立てられるのです。私たちは大きなアドバ ンテージを持っています。5月8日のポワチエさんの例を復習してください。ぐるっと回って、5月のころの講義 につながっているんです。 Q:何を研究しちゃってもいいんですか。 A:いいよ。自分の役にしか立たないのはダメだよ。「なんでオレは彼女のことがこんなに好きなのか」とかね。 Mにとっては有益かも知れんけど、他の人にとってはただのノロケだから。 Q:自分の研究(私は「あなたの研究」と記しました)は自分で勝手に探して、それが新しい情報化社会に どのように貢献するかってことですか。 A:はい。あなたの研究はあなたしか決められません。もちろん研究じゃないとダメですよ。一部の人々だけがよく 知っていることを多くの人々に伝えることは意義のある場合がありますがそれは研究ではなく、報道です。 自分の興味のあることを調べてまとめたというのはりっぱなテキストになる場合がありますがそれは研究では ありません。文化の皆さんは研究をたくさん読んでいるから、研究とは何かで悩むことはないですね。 Q:自分から進んで問いを立てて答えを探すようにすれば課題をやるのも楽しくなりそうだと思いました。 A:ぜひ楽しんでください。あなたが楽しんでいる姿を見ることで、闇にとらわれている方が救われるかもしれません。 Q:自分で書いた意見票が欲しいです。 A:お申し出ください。お渡しします。 Q:結局、初めから終わりまで情報で価値を作り出していくことが重要だと言っているんだと思った。せっかくの 資源もムダ使いせず、より良い使い方をして欲しいけど、安く大量生産した方が楽だし、買い手もたくさんいる。 この理想を実現するには難しいが一人ひとりが社会を知って社会に責任を持てばきっと実現できると信じたいです。 A:情報で価値を作り出すことのマイナスもじっくり扱ってきました。情報で価値を作り出しても、闇を増やす ようなら、価値がないどころが害悪だと主張しました。しかし「それでも情報化社会」という点と「社会を知って 責任をもてば」解決という結論でないところが私の理論の特徴です。楽しく働けるように工夫することで闇を 減らすべきだと主張しています。 Q:地産地消:近くで作られた安心感。生産者にもフィードバックがあり必要なものを自分たちでまかなえる。 身近な10人にウケた商品は全国規模で1000人にウケると考えてよい。 A:地産地消、東京など多くの政令指定都市ではとてもできそうにない。彼らにウケるでしょうね。東京が新潟の マネをする時代の到来、決して夢ではないです。いっしょにやりませんか。 Q:地産地消の具体例で、専門演習のみずき野調査(人間と社会コースの一部で行ないました)を思い出した。 あの項目はこのような裏があったのですね。 A:まずみずき野から始めるつもりです。アンケートの結果、マーケットの規模は十分そうですね。野菜を提供 してくれる農家も見つかりました。いっしょに、チャレンジして見ませんか? Q:皆が皆、自分の好きな仕事につけるわけでもなく、好きな仕事についてとしても自分が思っていた理想とは 違うこともあるだろうし、人生はそんなにうまくいかないと思う。でもそれを恐れて行動しないよりは、行動 すれば何かを得られると思うからなげていても仕方がないなと、今、質問意見票を書いていて思いました。 A:いまの「情報化社会」では多くの仕事はつまんないです。2章でお話したように仕事つまんなくしたんです、 情報化社会は(ムサシのように工夫し始めたところもあります!) しかしだからこそ私たちが“新しい情報化社会”をつくるんです、仕事を面白くして、強制でも理想のため でもなく、楽しいから他者のためになる仕事をするんです。そして資源の使用量に比例せずに需要を作り出す。 本学の卒業生の多くは、新潟で働くか、またいずれ新潟に戻ってきます。そして新潟ならば職場の中心的な存 在に十分になれます。そして変えていくんです、新潟を(他の地域で働く方は、そこでがんばろう)。新潟国 際情報大学の卒業生が次々と協力していけば、実現可能です。また(つまんない)仕事していても私が上司・ 経営者になったらこんな風に変えようって工夫することを考えていたら、少しは面白くなるよね。また実行可 能なものは職場で実践して、結果が出たら、もうワクワクだ。 Q:こういうレポートは初めてやる気がします。 A:それは深刻ですね、情報化社会の闇...今日から始めよう。 Q:日本は知識の蓄積ばかり集中して、外国は本当に大切なことがどういうことなのかよくわかっていると 改めて思った。 A:日本の大学は欧米の学問を取り入れるところから始まってしまったので、新しいものを作っていくという 発想が生まれにくかったのでしょう。しかし日本でも、すでに変革を遂げた大学が次々と出てきています。 例えば金沢工業大学では、1年生のときから、全員が自分の問いを持ち研究を始めます。その問いを 解明するために授業を選択します。そしていつでも研究ができるように大学は学生用の研究室(夢工房) を24時間開室しています。夢工房には学生さんが質問できるように、ティーチングアシスタントを配置して いるそうです。 できるところから、大学を変えていきたくて人間と社会コースの先生と相談して専門演習で、実際に調査 することを始めました。また皆さんが自分の問いを持つことは、皆さん自身の大学生活が楽しくなるばかり でなくそれが“新しい情報化社会”の一歩になることをこの講義で示しました。行動科学は問いを見つけ、 それを解く方法を身につける入門編です。社会理論と調査法は、解く方法にウェートを掛けた発展編です。 ゼミではお互いに協力し合いながら自分の問いを解いていきます。 Q:研究してない人ですけど、どーすればいいんでしょうか。 A:研究計画を考えてください。第2回の講義で配布した資料の「アメリカの大学ですぐれたレポート」(苅谷剛彦 1997) でお示ししましたように、研究して初めて“大学生”です。まだ1年半あります。今日、このレポートから始めよう。 問いは変わってもよい(ということは変わらなくてもよい)。けど常にもとう。自分の問いを解決するために講義を選択し、 聴講し始めたとき、どこの大学だろうと、“大学生”です(問いがなければどこの大学だろうと“大学生”ではない)。 Q:まだゼミが始まっていないので研究は思いつきません。 A:自分の問いにあったゼミを選択するのでは? いまからでも、問いを考えてください。どんどん問いを考えて 今回はとりあえず、一個をレポートにしてください。 Q:いままで私は誰かのつくった知識を覚えていただけかもしれない。 A:まだ1年半あります。いままで培った知識を生かして自分の問いを見つけて、解いていこう。 Q:一本道を歩いて途中であきらめるのと、多数の道を歩いて迷うのではどっちがつらいでしょうか。 A:どちらの時期もあったし、どちらのケースもたくさん見てきました。どっちがつらいかな。わからない。 けど、もっとつらいのは「やりたいことが見つからない」ことかも。私もそんな時期がありました。 Q:楽しみが新しい情報化社会に重要な要因であることがわかったが、今の世の中、なかなか楽しみが 見つけにくい社会になっていると思う。自分が楽しみが見つけられるか不安になった。 A:18歳ぐらいのときかな(最初のね!)、私も自分のやりたいことがわからず、つらかったです。 あまりつらいようなら一人で悩まず、ご相談ください。 Q:「データベース」「SE」って何ですか。 A:調べて見よう!(なるほど、システムだと出ない質問だ。勉強になった。) Q:格差社会が仕事の内容にもあるとは思いませんでした。 A:フォーディズム(いまのフォードは違うけど)にそった単純作業、まったく工夫する余地がなく 自分の仕事の成果がつかみにくい流れ作業だと、だんだん手を抜き始めるよね。理想論ではなく “楽しい仕事”になるように工夫していくことが“新しい情報化社会”では求められています。 情報文化学(情報がどのような文化を作り出すかを解き明かす学問)の出番です。 Q:社会貢献という点で内発的報酬が研究に対する意欲を高めることもあるのかなと思った。 A:あると思います。ぜひ考えて見てください。 Q:お金ベースの考えから私たちの社会はちがう考えの社会に大きく変化していくような気がします。社会の価値観が 大きく変化しているんだとトフラーとかがいっていたような気がしたけど、今までのドル中心的な社会から好きな ことを中心とする社会になったらいいなと思う。どんな組織になるのか、それとも変わらないのかすごく気になるし 不安に思う。 A:私たちが変えていこう! Q:今日の講義はとても早かったです。 A:当社比(?)で2倍の内容量でした。 Q:みんながそれぞれ違う考え方を持っているんだと思った。 A:手塚夫妻を題材に、グループワークしたかったです。残念。 Q:今回のプリントが足らずに自分のところまで回ってこなかった。課題をするために大切なプリントだったので余分なくらいに用意して欲しい。 A:いつも出席してくださっているのに、すみませんでした。ちなみにいつもの30%増しで印刷しました。今まで120部印刷すると20部ぐらい あまりました。今回は160部(120部の30%増以上)印刷しました。160部で足りないとは予測できませんでした。いつもどおり資料は私のホーム ページに掲載してありますので、お手数でしょうが、印刷してください。 最後のプリントだけ取りに来た方々に:今回のプリントに限らず、すべての回が課題のためのトレーニングであり、すべての時間が 今回のプリントと同じように大切です。 Q:ずーと話している人がいてすごくうるさかったです。最後の授業なのに残念だ。 A:いつもの100人なら、ピタッとすぐ静かになるのにね。何度注意してもずっと話している人がいて、私も授業に集中できませんでした。 本当に残念です。 話している人たちにとっては、自分の退屈さえしのげれば、他者の迷惑などまったく気にならないのでしょうね。まさに情報化社会の闇の 典型的な例です。しかし環境が違えば私たちも、もしかしたら彼女たちのようになっていたのかもしれません。彼女たちを救えるように情報 化社会の闇を取り払うことを考えましょう。 Q:自分の研究しようとしているものが、どう社会に影響をあたえるのだろう。経済と心理効果みたいなものを検証しようかなと思っているけど その2つのつながりが情報であるならば十分に関係あるものになりそうです。 A:5月8日の講義でお話しましたが物質−エネルギー法則以外の生物誕生以降の秩序原理が“情報”ですので経済制度・心理効果ともに情報です。 レポート、楽しみにしています。 Q:なぜ需要が減らないのかわからない。情報で創造しても、建築の分野の需要という部分でいうと減ってしまうと思った。 A:最後に感想ではなく、質問ができましたね。大きな前進です。すばらしい。 “情報”の定義を辞書の定義のままで考えているのではないですか。建築も“情報”なんです。 遺伝情報という用語法ができるまでは「情報」は「一回こっきりで、意思決定に役立つ伝達された記号の集合」 という意味でした。何回も使える物理法則などは情報でなく知識と呼び分けていました。「7月17日の情報社会論は休講」 といったものを情報と呼ぶ用語法です。情報の機能の「認識」の部分に着目しています。 遺伝情報(遺伝子がたんぱく質のカタチを決定する)という用語法が誕生して情報の「創造」するという機能が着目 されるようになりました。手塚夫妻が設計(情報)が生活を楽しくする(ライフスタイルを創造する)といっていましたよね。 良い例です。 また情報を「物質−エネルギー法則以外の生物誕生以降の秩序原理」とすることで「モード(a>u)の誕生によって、 毎年、クルマのデザインが変更されることで需要が生み出されるという大量消費・大量破棄の構造」と「新しいOSが作り 出されることで新しいOSに対応したPCに買い替えが進み、そして古いPCは再生可能な資源の名のもと、発展途上国に輸出 され、大量破棄されるという現実」の同型性が見えてきます。 辞書の情報の定義や情報=コンピュータという定義では、情報化の絶大な需要創出効果(特にコンピュータは絶大なのですが 情報の定義を拡張したがゆえに、需要の大きさのみならず、需要創出のしくみまで比較可能になりました)も、そして深い闇も 見えてきません(もちろん研究テーマによってはコンピュータ通信=情報という定義が合理的なこともあります)。 念のため、手塚夫妻の需要創出の話をもう一度、して起きましょう。 手塚夫妻は、世代を超えて持つ家を目標としていました。3倍長持ちすれば、需要は1/3になります。購買のリズムが3倍に 伸びるからです。しかし彼らの住む家族にあった設計という情報の価値によって価格が3倍になれば、購買のリズムが 3倍になっても、いっぺんに3つの家が売れるのと同じ需要を作り出せます。 さらに念のため、工場で画一的に生産され現地で組み立てられるタイプの家屋と需要の中身を比較して見ましょう。 工場で画一的に生産されるタイプは、ひとつの設計でとてもたくさんの家屋が建築されます。すなわちひとつひとつの 家屋における設計(情報)のコストはとっても少なくなっています。また組み立ても簡単なので、大工さんの労力(エネルギー) や工夫(情報)にかかるコストも少ないです。コストの大半は資源ということになります。資源に比例して需要が生まれる こととなります(2DKより4LDKの方が高い)。 手塚夫妻の建築は、ひとつの家屋の設計のために50個も100個も模型を作ります。またそれぞれの家族が望むライフスタイル (本人たちもはっきりわからない)を探り出すために多くの時間を使っています。情報に掛けているコストはケタが、ものすごく 違いそうです。また大工さんも建築のために毎回、工夫(情報)が必要です。 3倍長持ちすることで3倍高くても、顧客が長期間で支払う金額は同じです。しかし資源にお金を払っているのか、 情報にお金を払っているのかの違いがあります。情報に応じてお金を払うようになると、資源の量に関係なく需要が作り 出せます。そして単純に工場で作られた部品を組み立てる人ではなく、家族に応じて設計する仕事(情報を創造する人)や 複雑な工程を工夫しながら実行できる大工さんといった仕事が増加します。自発的で、工夫の余地があって、工夫の結果がわかる 楽しい仕事が増えます。需要も作れ、資源も節約することが、強制や理想のためでなく自分の楽しみという動機のもとに実行可能 です。需要創造のために他者の悲鳴を無視したり、間接化や不可視化で問題を先送りするなんて無縁です。 他にもわからなかったいると思います。質問してくれてありがとう(回答長い! 寝不足でハイになるとどんどん文章が 長くなってしまいます)。 Q:私は卒研でデータベースを作るので、作ったものがどのように役立っていくのか考えながら作りたい。 A:データベースだと比較的課題簡単だよね。いままでコンピュータ化されてないものをコンピュータ化することで資源の節約に なって、かつ検索が容易になることで需要が増えることが言えるといいですね。プログラミング・シミュレーション系も資源節 約−需要増大で話を持っていくのだろうな。しかも強制や理想のためではなく流通システムや道路状況の改善で、資源を節約 できそうですしね。労働の楽しさまで増しそうだ。具体例を述べると、レポートすることがなくなりそうなのでやめておきます。 スポーツ系は、まさに資源を使わず効用が増大するいい例ですしね。また筋力増強と労働の喜び(筋力増強により、ある種の 職業は能力を仕事のレベルに合わせることができる)との関連で論じることが可能なのかな。部活における組織論だと“楽しい 仕事”に結びつける手が考えられます。 文化学科の方は、基本的にレポート難しいと言っている方が少ないのですが、老婆心ながら、くれぐれも感想文にならない ようにお願いします。主張と根拠を明確にご注意ください。テキスト3章あたりにウェートをおき、他の条件についても考える 手が、パッと浮かびますね。もちろん他の手もあります。他の科目のレポートの活用もできそうですね。それはそれでとっても 良いトレーニングになります。ひとつの文献や事例を複数の視点で見直すことになるので。大丈夫ですよね。 Q:地産地消? 農家持ち寄り市場が自宅近くにある。 A:地産地消のいい例ですね。場所や時間、種類等の情報がわかれば、意外と通勤通学の途中にちょっとよれば、安くて良いものが 簡単に手に入りそうです。私たちの仕事がありそうですね。(レポートのためのここでやめておきます!)また農家の作物に掛ける 情熱等も消費者に伝える仕組みが作れるかも(食を通してローカル社会を、さらに働くことを考えるきっかけを与えることも可能か)。 私たちの学部の可能性、まだまだありそうですね。ちなみに本学があるところは新潟市が政令指定都市になったとき7区となります (小針・黒崎とかと一緒)。7区のビジョンとして、地産地消と大学等との連携が大きな柱となっています。新潟国際情報大学の出番 だな。 Q:自分はマーケティングの勉強をしているのですが需要を生むとき、その市場が行き詰った場合はどうするかというと単純ですが 新しい需要曲線を作れといわれています。ゲーム市場でいえばニンテンドウDSは、マーケティング的な視点から見ると全くその とおりのことを行っていて面白いモデルです。 A:モードは必要ですが、下手をすると化学兵器の需要がなくなったので、新しい需要曲線として農薬にバトンタッチ!っていうよう に闇をどんどん増やしてしまいます。資源の浪費を増やさなくて、かつ需要を増大させるという視点を、ぜひ併せ持ってください。 企業にとってもたいへん重要な視点です。 ニンテンドウが、高性能主義を捨てたことは興味深いです。高性能のハードに次々とバージョンアップすることで、結局ゲーム そのものが難しくなり、かえってユーザーに喜ばれないものになってきているのではないかと考えたようです。高性能化よりも 大人から子どもまで楽しめるものに力点を置いたそうです。DSも同じ流れなのかな。 Q:需要を減らさずにムダを省くことはアイディア、情報を商品やシステムに盛り込むことにより需要も落とさずに資源を減らせると 思いました。アイディア次第で資源の量が少なくても需要が生み出せることを中心に考えてレポートに書きたいと思います。 A:アイディア、楽しみにしています。 Q:新しい情報化社会を考えてもどうしても闇の部分が出てしまう。 A:手塚さんの例もそうですが、ゼロにはならないと思います。減らすことを考えてください(私もいまカントリーマーム食べて ごみ増やしてるし...まったく必要のないカロリーだし)。 Q:新しい情報を作ることは新しい産業を作ることだろうか。 A:いい質問だな。「新しい産業を生み出すこと」と「新しい価値を生み出すこと」はイコールではないですね。 「新しい価値を生み出すこと」だけど「新しい産業を生み出すこと」ではないことは比較的簡単に思いつくのでは? 考えて見よう。 Q:楽しいときの3つの条件は3つそろわないとダメなのですか?それともどれか1つだけでもあればよいのですか? A:楽しいときの条件ですが、3つそろわなくても楽しいです。もちろん3つ揃うに越したことはないですが。 ご自身の楽しみに当てはめて考えてください。 Q:「比較的スムーズに仕事が進む」「成果に見合った評価」という点も楽しみの条件に加えたい。 A:「成果に見合った評価」は3番目の「工夫した結果がわかること」の一部であると考えています。 「比較的スムーズに仕事が進む」は工夫の結果、スムーズになったのなら、なら3番、偶然なら今回紹介しなかった、「運」に 分類されるかもしれません。ときどき運に左右されるからこそ、面白いこともあります。 Q:工夫も毎日だと日常になってしまうので大変そう。 A:手塚夫妻もそうだと思うけど、楽しさってポジティブフィードバックするんですよ。 楽しいと工夫するし、工夫すると結果がついてくるし、そうするとさらに自分で進んでやっちゃう。 毎日、工夫することが楽しくなっちゃうんです。 Q:広くて長持ちでは「土地」困る人、または増築したり便利さから「電力の無駄遣い」などが予想される。 好みや能力の差から依頼が減る人が、仕事がなくなる人がでる。 A:お聞き違いかと思います。「Q:なぜ需要が減らないのかわからない」の回答をお読みください。 資源に比例せずに需要を生み出すので、広い必要はありません。単純作業の仕事は減りますが、工夫する余地 があって、結果がわかる仕事が増えます。質問することは素晴らしいです。質問することで聞き違いにも 気がつきます。いいですよ。 Q:好みから詐欺師が増える A:好き勝手に犯罪する社会ではなく、それぞれの職場が楽しさを再配分することを主張しています。 いいよ、どんどん質問して。次ぎ行ってみよう! Q:楽しさだけでは仕事ができない。 A:楽しさだけとは言っていません。外発的報酬のみであることがないようにしようといっているのです。 お、次はすごい質問だな。面白いよ。 Q:原発などは楽しくできる仕事ではない。 A:東海村臨界事故はまさにこの講義の2章の具体例です。もし原発を止めないのであれば、むしろもっとも アイディアを出し合うべきところでしょう(原発を止めるという選択肢もあります)。 「スペシャルクルー」と呼ばれる3名の作業員は規定の6〜7倍のウランを処理しようとしました。一度に 多くの作業をした方が早く作業が終わるからです。 「フェールセーフ」という概念をご存知でしょうか。「人は誤る」との前提から、誤りがあっても安全なよう にあらかじめ工夫しておくことです。この場合、装置の中に、規定以上のウランが入れられないサイズにして おけば、事故は防げました。臨界に関する十分な知識がなくても、自分や仲間の安全のために工夫できる部分 は、たくさんあるのでしょう。 Q:仕事の楽しさの配分はできないのでは A:具体例があるので、できないという命題はすでに成り立ちません。 Q:国や会社の利害からの不自由がある。 A:企業でも、楽しみの3要素を取り入れる職場環境を目指しているところがあります。優秀な人材が工夫をしている 企業にあつまることで、他の企業や国にも影響があると思われます。 Q:職業による。我慢は必要になってくる部分がある。 A:楽しい仕事が偏っているので、再配分しようと主張しています。したがって楽しい仕事だけになるという主張は していません。楽しい部分を分け合うのです(私が一番、独占している気がしますが)。同時に楽しい部分が増える ような工夫も行ないます。増やせる部分、たくさんあります。 参考文献 苅谷剛彦 1997『知的複眼思考法』 講談社 115ページ