エクセル編



エクセルの機能

 何ができるかを知っておくことは、大切です。何ができるかを知っておけば 必要なときに「使い方を調べよう」ってなりますが、何に使えるかもわからな ければ、調べる気にもなりません。分類の仕方は目的によって変わりますが 「文系の利用法」という目的から大きく、3分類にしてみました。

  1. データベース機能
  2. 表・図形描画機能
  3. シミュレーション

1.のデータベース機能は文系にとって、わかりやすい機能・目的です。卒業論文等、文献一覧を作るときに大変便利です。 論文の一般的な文献一覧の作成法に従って自分の文献データベースを作成しよう!

もう、ゼミで文献一覧の作り方は習いましたか。 日本社会学会のホームページに社会学評論のスタイルガイド掲載されています。これが論文執筆の際の文献一覧や引用の仕方等、大変、網羅的に解説がしてあります。具体例も示されていて大変便利です。まずはこのスタイルガイドで文献一覧にはどのような情報を、どのような順番で書くのか調べましょう。

エクセルで文献データベースを作ろう!

項目を設定しよう

行ごとに書籍の情報が並び、列にさまざまな項目が並ぶようにします。一列目は番号として通し番号を打ちましょう。 あとで、データベースを使用するとき、文献の並べ替えを行いますが、通し番号を打っておくと、元の並び順に すぐに戻せます。

スタイルガイドにしたがって必要な項目を並べておきます。そのあとに著者のアルファベットのイニシャル・50音の頭文字 の項目を作っておくと便利です(なくてもアルファベット順・50音順に並べ替えてくれるのですが、外国語文献と日本語文献 が混じっているときはこれがあると便利です)。

皆さんはさまざまな講義・演習で文献を読むと思います。また皆さんがこの大学で追求するひとつの問いにたどり着くまではさまざまなテーマにチャレンジすると思います。「講義・演習名」「分類(未来の自分がわかり、便利な分類の仕方をしよう)」という項目を作っておこう。あと「読んだ日付」「データベースに掲載した日付」の項目も作っておくと便利です(日付をわすれた文献は空欄にしておけばいいでしょう)。さらに「一言コメント」(こんなときに役立つ!等)の項目を作っておくと、未来の自分がきっと今のあなたに感謝します!

データを入力しよう!

本学図書館の検索システムや全国の大学の検索システム(Web Cat:本学図書館にリンク)を使って、皆さんが読んだ、または 皆さんが興味のある書籍のデータベースを作ろう。あと国会図書館のデータベース、雑誌記事索引は、論文集の中のひとつひとつの論文が検索できます。これもとっても便利。

作ったデータベースを使ってみよう

文献表は、講義・演習・卒論等、目的によってデータベース全体の一部を表にすることになると思います。そんな時「並べ替え」や「フィルター」の機能が便利です。文献表は、アルファベット順または50音順にならべ、同一著者が複数ある場合、年代順に並べます。「並べ替え」や「フィルター」の機能を使って文献を並べ替えて、データベースからコピーし ワードに貼り付けて、社会学評論のスタイルガイドにしたがった文献一覧を作ってみましょう(少なくても1つは作ってみてください)。

自分の作った分類ごと、それぞれどれだけの文献を集めたか、知りたくありませんか? 「集計」機能を使って数を数えてみてください。

課題:データベースとワードの文献一覧を添付ファイルで私のところに送ってください。

表・図形描画編

データのダウンロード

議論をするとき、データがあると具体的に考えることができます。議論のポイントがわかるようにデータを分析し、「なぜ〜なんだろう」という問いを見つけることが大切です。さらに議論で意見が対立したときにどちらの意見がデータとあっているか決着がつくように、データを分析しましょう。

以下のURLからデータをダウンロードしてください。

http://www.nuis.ac.jp/~komiyama/data.xls

選挙に関するデータは新潟日報社のホームページ、その他のデータに関しては『民力CD-ROM(2001年度版)』が出典です。民力のCD-ROMは本学図書館に所蔵されています。選挙データは2001年参院選挙新潟選挙区の市町村別の投票結果です。その他のデータは主に1995年の国勢調査報告書が原典です(詳しくは民力参照〜論文では原典を必ず記述してください。またデータに誤りがないか原典でチェックしてください)。

計算式の編集(式の計算・関数・絶対参照)

次のことを調べよう!

1)トップ当選したのは誰だろうか? 2番目は?
2)トップ当選した候補者は、どの市町村でもトップ当選したのだろうか?
  同様に2番目の当選者についても調べよう。

グラフの作成

適切なグラフ表現をする。グラフを作成するためにデータを加工する

1)連続データの入力(次に行なう「データの並び替え」後またもとの順に戻せるように番号を振っておく。)
2)データの並び替え  得票率順に市町村を並び替える。
3)棒グラフ
 2)のデータを用いて市町村別の得票率のグラフを作成する。

練習

1)各市町村ごとの第一次産業就業者割合・第ニ次産業就業者割合・第三次産業就業者割合を計算してください。
2) 1)のデータからグラフを作成してください。
3) 2)のグラフと真島氏の得票率のグラフを比較し、どのような産業に従事している ひとびとが多い市町村において、真島氏は、多くの票を獲得したのか、論じてください(エクセルに考察を入力ください)。

仮説の検討


1.原因と結果の間のプロセスの検討
「第[ ]次産業就業者の割合の高い地域で真島氏は得票率が高い傾向が見られた」という現象が起きるプロセスを考えてみよう。

悪い例(原因と結果のプロセスが不明確)
真島氏は農村部で支持された。

良い例(原因と結果のプロセスが明確)
真島氏は県議・市議の自民党議員の選挙協力を得られた。自民党は農業従事者の間で支持者が多い。そのため真島氏は農業従事者から多くの支持を得た。したがって農業従事者が多い市町村ほど、真島氏は多くの得票を得た(農業説)。

2.別の要因の検討
1.で考えたプロセス以外の原因以外で、真島氏が「第[ ]次産業就業者の割合の高い地域で真島氏は得票率が高い傾向が見られた」という結果が得られる場合を考えて見よう。

悪い例(「第[ ]次産業就業者の割合の高い地域で真島氏は得票率が高い傾向が見られた」という結果と矛盾している)
真島氏は都市部で支持された。

良い例(「第[ ]次産業就業者の割合の高い地域で真島氏は得票率が高い傾向が」という結果の原因となっている)
真島氏は県議・市議の自民党議員の選挙協力を得られた。自民党は高齢者の間で支持者が多い。高齢者が多い市町村ほど、真島氏は多くの得票を得た(高齢者説)。農業従事者は高齢者が多い。そのため、第一次産業従業者比率と真島氏の得票率はある程度、相関関係が見られたが、それは疑似相関である。

3.検証
a.高齢者率の高い市町村(1位〜55位)、高齢者率の低い市町村の2つのグループごとに第1次産業従事者割合と真島得票率を増減を比較するグラフを作成しましょう。
b.1次産業従事者割合の高い市町村(1位〜55位)、1次産業従事者割合の低い市町村の2つのグループごとに高齢者率と真島得票率を増減を比較するグラフを作成しましょう。
・もし(比較的)農業説が正しければ、aの2つのグラフはbの2つのグラフに比べ、グラフの増減が一致しているはずです。もし(比較的)高齢者率が正しければbの2つのグラフはaの2つのグラフに比べ、グラフの増減が一致しているはずです。どちらの仮説が比較的データに適合的な仮説はどちらか結論付け、エクセルに入力しておいてください。

・これはグラフを用いた簡単で視覚的な仮説の検討方法です。厳密には、多変量解析(重回帰分析・分散分析等)を行い統計的検定によって検証する必要があります。本学の講義(社会理論と調査法・生活統計・地域統計・多変量解析法等)で修得できます。


課題

皆さんの立てた仮説を二つ選び、上記のとおり、グラフを作り、検証してみよう。

 当時、全国紙では小泉旋風が自民党の勝因であると報道していました。しかし、本学の越智先生は まったくことなる説を唱えていました。真島氏は小泉首相の唱える“小さな政府”とは、逆行する さらなる社会資本の整備を主張していたからです。  まだまだ十分に道路等がいきわたっていない、そして過疎化が進む地域の人々が、彼の主張を支持 したいのではないか? 新潟県民は東京都民とは違う理由で自民党に投票したのではないか? 疑問 をもったっとき、その疑問の解決のひとつの手段としてコンピュータを使えるようになってください。 (「道路を作って新潟が救われるか」これはまた別のお話。「情報社会論」でお話します。)


課題

 

パワーポイント編を参考に今回の結果をパワーポイントにして見ましょう。

注意:仮説は、抽象的なものです。抽象的なものは難しいです。だからこそ、なるべく“具体的”にプレゼンテーションしましょう。どんな人が、どんな気持ちで真島氏に投票した結果、私たちが始めに観察した市町村別の真島得票率の分布が出来上がったのかをビジュアルに表現してください。文字の羅列だけのプレゼンはやめましょう! グラフ・表・図解を駆使してください。パワーポイントの操作は簡単ですが、良いプレゼンに効果的に使うのは大変難しいです。しかしだからこそ練習してください。

パワーポイント編

シミュレーション編

“算数が苦手な人”にとって、エクセルのシミュレーション機能は大変心強い! なぜなら 方程式を立てなくても、いいのですから。

共通練習課題:金利計算!

  1. ホームページで消費者金融(アイ○ルとか)の実質年率を調べてみよう!
  2. 50万円借りたとして、一ヵ月後(ひと月30日とする)の残高を計算しよう。
  3. 計算式: (残高:はじめは50万円。翌月からは利子を加算し、返済額を引いたもの)
          ×(実質年率)
          / 365日
          ×(借り入れ日数:一ヶ月30日とする)
  4. 返済額を2万円として、24ヵ月後に残高がいくらになっているかシミュレーションしよう!
  5. 月にいくら返せば24ヶ月で全額返せるだろうか(ゴールシーク:方程式いらず!)
  6. 月に最低、いくら返さないと、借金が減らないか、計算しよう(ゴールシーク:方程式いらず!)

課題:真島得票率

自分が採択した仮説が正しいとしたら、真島得票率がどのように変動するかシミュレーションしてみよう

重回帰分析

  1. 仮説検証:グラフで! しかし直感的にわかるが、判定が難しい。
  2. そこで...重回帰分析
  3. たとえば、農業説(第一次産業従業者比率)・道路説(第二次産業従業者比率)が真島得票率にどのように影響を与えているか
  4. ツール→分析ツール→回帰分析
  5. 入力Y範囲:真島得票率
  6. 入力X範囲:第一次産業従業者比率・第二次産業従業者比率
  7. 有意水準にチェック
  8. OK
出力の見方は演習で! 注意:多重共線性

シミュレーション

  1. 重回帰分析の結果を用いると真島得票率を予想できます!
  2. 第一次産業者比率×係数+切片=真島得票率
  3. 第一次産業者従業者比率が何%だと真島得票率は20%に達するか(ゴールシーク:方程式を解かなくてよい!)

シミュレーション課題

  1. 自分の「表・図形描画機能」での分析を重回帰分析で確認しよう。
  2. どのような変数がどの程度上昇すると真島得票率がどのぐらい上昇するのか、確認しよう。 
  3. パワーポイントに今回の結果をまとめよう(ビジュアルに)

付録:VBAでプログラミング入門!(1月6日)

簡単マクロ

  1. ツール→マクロ→新しいマクロの記録→OK
  2. 一連の作業 今回:各自がExcel編で作成した文献一覧の並べ替え
      講義・著者名(アルファベット順)・年代(降順)で並べ替えよう
  3. 記録終了をクリック
  4. ナンバー順で並べ替えた後、マクロを実行してみよう!
  5. ツール→マクロ→(今作成したマクロを指定して)実行
  6. ナンバー順で並べ替えるマクロも作成しよう!
  7. ボタンを作成しよう! 表示→ツールバー→フォーム
  8. ボタンのアイコンをクリックして、マクロを指定してOKをクリック
  9. ボタンののところで右クリックでテキストの編集で名称を変更。
  10. 講義・著者名(アルファベット順)・年代(降順)で並べ替えるボタンと、またナンバー順に戻すボタンを作成しよう!

VBA(Visual Basic Applications)

  1. 今、作成したマクロはVBAで書かれています!
  2. ツール→マクロ→Vsual Basic Editor
  3. 標準モジュールをクリック
  4. 一連の作業をVBで記録してくれていたのです。
  5. 自分でVBでプログラムすることもできます。

最後に

 

「文系の大学生に必要なスキルの修得」を目指してきました。大学とは「新しい情報を創造する能力を身につけるところ」であって、決して「既存の情報を覚える」ところではありません。「文系の大学生に必要なスキルの修得」とは「コンピュータの操作を覚える」ことではなく、「情報を創造するための道具としてのコンピュータの利用」ができることです。 

 

ワード編では、論文執筆に必要な操作を紹介しながら「構造化」ということを学びました。生まれながらに論理的な人はいません。論理的に物事を考えることは人間、だれでも得意ではありません。コンピュータは論理を「構造化」することを手助けしてくれます。論理の構造が明確になると、考えやすくなります。そんな練習をワード編では行いました(チェックシートの作成・論文の構成)。  

 

自分の人生を、そして他の人々の人生を真剣に考え、意思決定を行おうとすると、「情報」が欲しくなります。情報を整理するための方法として、エクセルを用いてのデータベースの作成を行いました。今までの情報は、必ずしも皆さんが直面する問題に対して、具体的に答えてくれるわけではなりません。自分の問題について考えるとき、果たしてどの情報が、現状に適合的なのか、そもそも既存の情報が、いま通用するのか、疑問が生じます。そんなときの決着のつけ方のひとつが疑似相関を見つける方法です。AかBか、どちらの要因を重視すべきか。そんな時に、Aの条件を均一にして、Bを変化させたとき、どのように目的となる事象が変わるのか、またBの条件を均一にして、Aを変化させたときはどのように目的となる事象が変わるのか確かめ、見かけ上、影響を与えているように見えるが、実際には影響を与えていない要因を探り出す方法でした。そして原因がわかったとき、どの程度、原因が変化すると結果が変わるのか調べるのがシミュレーションでした。  

 

自分の人生を真剣に“生きる”とき、そして「大学で学ぶことができた極めて恵まれた人々の責任」を果たすとき、役立つスキルのひとつです。いまはまだ実感がわかないかもしれない。しかし何を行ったかは頭の片隅に入れておいてください。あなたが真剣に生きたくなったときに、そしてスキルが必要になったら、いつでもどこでも何度でも質問してください。できる限りお答えします。実際に卒論を書くときになって、質問に来てくれる学生さんがいます。それでいいと思います。

最後の最後に一冊、本を紹介したい。「グスコーブドリの伝記」です。宮澤賢治の『風の又三郎 : 他十八篇』(岩波書店、1993年[改版])に収録されています。大学とはグスコーブドリのような人々が集うところだと私は考えます。皆さんが“ブドリ”に近づくお手伝いができたとしたら、幸いです。