2004年度版

 本を読みながら、涙が出たり、怒ってみたり、悲しんだり、感動したり、本を読むのは楽しいものですね。自分の学習や仕事に関係する本を買うのは勿論ですが、専門外の本を読むことにより、知らずにいたことを知り、自分の世界が広く大きくなったと思う事が少なくありません。私は、小説は勿論の事、政治、経済、法律、社会全般、福祉などに関連する本を買い求め、時々、参考となる文字や文章をノートに書きとめておきます。その中の幾つかは、私の人生の中で大きな示唆を与えてくれました。読書はきっと学生諸君の人生を豊かなものとすることでしょう。

新潟国際情報大学 学長 武藤 輝一

情報文化学科 情報システム学科
安藤 潤
石井 忠夫
臼井 陽一郎
大山 毅 
越智 敏夫
竹並 輝之 
佐々木 寛
永井 武
高橋 正樹
樋口 光明 
長坂 格 宗澤 拓郎 
原口 武彦
  
広瀬 貞三
 
プラーソル・アレクサンドル  
矢口 裕子
 

安藤 潤

@武者小路実篤友情新潮文庫(新潮社、2003年)
 
この本を読むたびに過去何度も繰り返された自分自身の恋にまつわる悲劇が蘇り、その度に刻まれてきた心の傷が痛みます。

Aマルクス・エンゲルス『共産党宣言』岩波文庫(岩波書店、1971年)
 大学院生時代にお金も無く一人で過ごしたクリスマス・イブの夜、思わず手にした思い出の本。「ヨーロッパに幽霊が出る――共産主義という幽霊である。」(本文p.37より)という書き出しの一文はあまりに有名。


石井 忠夫

アンドレア・バター,デビット・ボーム著 伊藤正宏監修,小林淳子翻訳『シンプリー・パーム―理想のPDAを目指して』(ソフトバンクパブリッシング、2002年)
 
1990年代の初めに現れたPDA(Personal Digital Assistant=個人情報端末)またはハンドヘルド・コンピュータの考えに対して、独自の設計哲学を持つ青年がベンチャー企業を設立し、アップル社のニュートンやマイクロソフト社のホケットPCと市場で対峙しながら成功するまでの波乱万丈の物語である。彼らが開発した製品は現在においてもソニーのCLIEシリーズ等に利用されている。


臼井 陽一郎

こたつとみかんの季節におすすめです。
  谷川俊太郎『はるかな国からやってきた』(童話屋、2003年)
  谷川俊太郎『みみをすます』(福音館書店、1982年)
  宮沢賢治『春と修羅』(日本図書センター、1999年)


葉のいろのあかい季節におすすめです。
  サマセット・モース『月と六ペンス』新潮文庫(新潮社、1985年)
  ドストエフスキー『白痴 上・下巻』新潮文庫(新潮社、1982-1983年)


汗にじむ季節におすすめです。
  マルクス・エンゲルス『共産党宣言』岩波文庫(岩波書店、1971年)
  ウェーバー『職業としての学問』岩波文庫(岩波書店、1980年)


さむさのこるさくらの季節におすすめです。
  難波田春夫『スミス・ヘーゲル・マルクス』講談社学術文庫(講談社、1993年)
  三木清『語られざる哲学』講談社学術文庫(講談社、1977年)

すべての季節にわたって。研究者の原点です。
  ジャン・ジオノ『木を植えた男』(あすなろ書房、1989年)


大山 毅


新渡戸稲造『Nitobe武士道を英語で読む』宝島社、(別冊宝島)2004年
 日本では宗教教育をしていない。それでも日本人は物事の善悪をわきまえて生活をしている。新渡戸は物事の判断基準は武士道の精神によるものであると述べている。世界的名著である「BUSHIDO」を対訳と解説つき(全文についているのではないが)の本書で読んでみてもらいたい。

乙武洋匡『五体不満足』講談社、1998年
 乙武氏は先天性四肢切断という重い障害をもって生まれてきた。五体満足で生まれてきてもふさぎ込んだ暗い人生を送る人もいる。それに引き換え、乙武氏は明るくさわやかに人生を楽しんでいるようだ。この本は彼の出生から20歳頃までの生い立ちの記録である。

ボブ・ウィーランド/遠藤正武『腕で歩く』竹書房、2001年
 
アメリカ人のボブは大男であったが、1969年にベトナムで地雷により下半身を失ってしまった。それでもいろいろなことに挑戦しながら快活に生きている。そしてなんと腕で歩いてアメリカ大陸を横断してしまったのだ。本書の帯に筑紫哲也氏は「不屈とはこういう人のことを言うのだろう。地雷で下半身を失っても、人間としての輝きと目標を失わない。希望を見失いがちなこの国の若い人たちにぜひ読んでほしい。」と述べている。同感である。

越智 敏夫


松浦玲『還暦以後』筑摩書房、2002年
 「ものがたり」とはなにか、その一。古くは法然から河竹黙阿弥、徳富蘇峰をへて中村真一郎にいたるまで28人の還暦以後を語る。人生五十年の時代。寿命の長短と長幼の序によって歴史を見る。たとえば維新三傑(西郷、大久保、木戸)は皆50歳前に死ぬ。維新に負けた勝海舟は彼らより先に生まれたが長く生き、日清戦争後のアジアを憂慮しつつ1899年に死ぬ。徳川慶喜は明治天皇より年上だが大正(当然、明治天皇の死後ですね)まで生き残る。その慶喜が1898年、赤坂氷川の海舟宅を訪れ維新を語る。この関係をどう読むべきか。他の人物(女が西太后だけというのが少し気になるが)の還暦以後もすべて興味深い。皆、嘘をつき、勘違いし、痴呆はすすむ。そのなかで時間を語る著者。圧倒的な史料解読の技。これぞ知性。

アゴタ・クリストフ『悪童日記』早川書房、(ハヤカワepi文庫)2001年
         『ふたりの証拠』早川書房、(ハヤカワepi文庫)2001年
         『第三の嘘』早川書房、(ハヤカワepi文庫)2002年
 「ものがたり」とはなにか、その二。この三部作で語られていることはフィクションである。本当のことは一片もないだろう。しかし嘘に嘘を重ねることで作者の言いたいことが伝わるのならばそれでいい。凡庸な真実よりは意義ある仮構。さらにいえば一切の固有名詞も物語から消失している。真っ白な嘘と匿名性のなかで浮かび上がる人間の残酷さ。著者はハンガリーに生まれ、第二次世界大戦中に幼年時代をすごした女性。1956年に西側に亡命している。本作は東欧の血塗られた現代史を語っているように読めないこともない。が、それを超えた内容がこの謎解き風の話のなかで語られている。最近翻訳されて評判のゼーバルト『アウステルリッツ』(白水社、2003年)にも似た印象をもつ。面白さはクリストフ、深みはゼーバルトか。

村上春樹『風の歌を聴け』講談社、(講談社文庫)1982年
    『1973年のピンボール』講談社、(講談社文庫)1983年
    『羊をめぐる冒険(上・下)』講談社、(講談社文庫)1985年
 
「ものがたり」とはなにか、その三。これも三部作。『ダンス・ダンス・ダンス』というつまらない続編があるが読まなくていい。この「羊」で終わるべき。もしあなたが「読むものがない。面白い小説なんか読んだことない」と思っているのならぜひこれを。70年代初期の馬鹿大学生(とそのなれの果て)の独り言が延々続くように読めないこともない。しかしここで語られている「おはなし」は80年代中期の学生にとっては無理に頭から降りかかってくる時代の雪のようだった。現在形として語られる郷愁。人によっては溶けるのもはやかっただろう。デュラン・デュランが流れるバブル初期の東京でビーチ・ボーイズと学園闘争についての小説が書かれ、売られる。読んでいるとやたら缶ビールを飲みたくなる小説だが、この面白さはやはり技巧の勝利だと思う。

松村雄策『悲しい生活』ロッキング・オン、1994年
 「ものがたり」とはなにか、その四。「名文」と呼ばれるものはそれだけで忌避してしまう。かつて教科書で無理に読まされた小林秀雄のせいか。指示代名詞だらけのまわりくどい文章。表面上はどうとでも取れるが実際言っているのは「ぐじゃぐじゃ理屈こねまわさずに権力と権威に黙って従え。それが日本の真の伝統文化である」くらいだろう。空疎な美文。そんなひどいものと異なり松村の文章を読むことは中学以来の私にとってひとつの救済だった。ロック、小説、落語、プロレスなど好きなものについて語る。権威から解放された明晰な文章。個々の趣味に相違はあるが、その姿勢には現在でも共感している。彼のものならすべて推薦可。紫煙が充満する後楽園ホールのロビーで本人をときおり見かけるが、いまだに声はかけられない。見た目、ちょっと恐いし。

Alan Moore and Dave Gibbons.
Watchmen, DC Comics, 1987, (ISBN: 0930289234)
 「ものがたり」とはなにか、その五。アメリカン・コミックスの金字塔。そういう誉め方以外は想像できない傑作。気障と言われても原著を読め。コミックスだからこそ翻訳とは感動の質と深さが違う。大恐慌から冷戦にいたるアメリカ。もしスーパーマンやバットマンのようなヒーローが実在したら。彼/彼女たちは本当に地球を救えるか。一見馬鹿みたいなテーマでこの感動の長編を描ききった Moore もえらいが、それを平面芸術として表現しきった Gibbons もえらい。もちろん出版したDCもえらい。各連載原稿のあいだにはさまれた「資料」を読むたびの驚き。パラレル・ワールドものと読めないこともないが、そもそもパラレルじゃない「ものがたり」ってあるのか。リアルとは何か。最大の問題はこれを大学図書館に置いてもらえるかどうかだ。

佐々木 寛


広河隆一編集 雑誌『DAYS JAPAN(デイズ ジャパン)』創刊号(DAYS JAPAN),2004年3月20日号
 現在の世界を知るために最も信頼できるジャーナリズムのひとつの姿として。写真というアートを通じて,世界を重層的にみる力を養うことができる。今必要なのは,生半可な「理想主義」よりも,絶望的な「現実」を正面から見すえる勇気である。

江口昌樹 『ナショナリズムを越えて』 白澤社,(現代書館発売)2004年
 「地域紛争」の最も深層で戦争の本質をとらえ,日常からの平和構築を実践してきた旧ユーゴのフェミニストたちの記録。ジェンダーと戦争の問題がいかに深くむすびついているのかを十二分に理解することができる。

フィリップ・ゴーレイヴィッチ 『ジェノサイドの丘(上・下)』(WAVE出版)2003年
 題材は,1994年のルワンダで起こった虐殺の真実。
 100万人が殺された事実の背後には,「国際社会」という無責任のシステムがあった。
現代の「ジェノサイド」はわれわれとは決して無関係ではない。われわれは「アフリカ」への固定観念もまた,破壊しなければならない。

プリーモ・レーヴィ 『アウシュヴィッツは終わらない』(朝日選書) 朝日出版社,1980年
 「現代」とは何だろうか?現代人であるわれわれの思考の出発点は20世紀の「強制収容所」の経験にある。
一人のイタリア人の経験とその記録を,今また読みかえすことによって,われわれは自らの位置を確認することができるだろう。

高橋 正樹


ラス・カサス(染田秀藤訳)『インディアスの破壊についての簡潔な報告』岩波書店、(岩波文庫)1992年
 なぜ、アメリカ大陸にヨーロッパ系の人々が住んでいるのか。征服者であるスペイン人たちが、16世紀に南米で行った収奪と殺戮と支配の実態を教えてくれる本です。現代世界の物質的豊かさや文化が、歴史的な強者による弱者の搾取と支配の上に成り立っていることを突きつける本です。

金子郁容『ボランティア―もうひとつの情報社会』岩波書店、(岩波新書)1992年
 ボランティアは「善意」でも「無償奉仕」でもなく、自分を他者や世界とつなぐこと。「与えることは与えられること」という関係に基づき、まず自分から「与える」行為がボランティアだと筆者は考えます。益々、金儲け主義がはびこる現代社会で、カネには代えられない「喜び」「充実感」を得える行為が重要であることを教えてくれます。

矢野暢『「南進」の系譜』中央公論社、(中公新書)1975年
 日本が明治以降、「脱亜入欧」によってアジアを侵略する過程で、東南アジア(南洋・南方)へも進出する過程が良く説明されています。日本の影響力が最も強い地域のひとつである東南アジアについて、以外に知らない人が多いと思いますが、明治以降日本と不平等な関係の歴史的な形成過程を知る良い本です。

清水幾太郎『論文の書き方』岩波書店、(岩波新書)1983年
 文章の書き方の本はたくさんありますが、本書は大学生にとっての文章の書き方を教えてくれる古典です。簡潔に分かり易く書くことが文章の命であることが分かりやすく書いてあります。

竹並 輝之


浦昭二ほか編 『情報社会を理解するためのキーワード1,2,3』 (培風館、2003年)
 インターネットに代表される情報技術が効果を発揮し、より大きな存在になるにつれて、情報システムの社会的な影響も増大している。これらの現実を理解し、適切に対応するためにも、情報システムとしての人間社会がどのような構造になっているかを理解することが重要である。本書では、情報の意味を理解する上での重要な概念を3部に分けて解説している。
 1部では、人間活動と情報システム、2部では、情報システムの基本概念、3部では、情報システムの企画・設計・開発・運用について解説している。
 情報システムに関する話題を知るために、辞書としても読み物としても利用できる。

永井 武


村上龍著 『13歳のハローワーク』 幻冬舎、2003年
 この本の題名の意味は、自分の将来の職業を考えるのに13歳からでも早くないという意味である。自分が好きなことを見つけて13歳から取組めば、やがてその方面の一流の人物になる可能性が高い。そのための職種約550種について自然と科学、アートと表現、スポーツと遊び、旅と外国、生活と社会、何も好きなことがない、と大きく6つにわけて解説している。一読の価値がある。
 例えばテレビゲームを作る職業につきたい人は、本を沢山読むといいゲームが作れると13歳以上の人にアドバイスしている。アニメを作る職業につきたい人は、アニメ製作会社に弟子入りするとよい。歌手になりたい人は、1日8時間それを30日間カラオケを歌ってそれでも歌うのが楽しいと思えるか試して見るとよい。それでも楽しいと思える人は見込みがある。
 大学生になっても自分がやりたいこと、好きなことが見つからない人もいるだろう。それをこの本の著者は、好きなことに出会っていないだけと言っている。
 サラリーマンになりたいと思っている人は、自分はどのようなスキルをもって会社の仕事をするのか、という意識が必要である。いい学校、いい会社に入れば一生安泰という時代ではない。会社が不振になったら、そのスキルを生かして次の会社に転職する世の中であるからである。
 この本は、50歳まで嫌々働いて楽しくないまま生きたらそれは負けという姿勢で書かれている。

長坂 格


松本清張著 『或る「小倉日記」伝 』 新潮社、(新潮文庫)1998年
 フィリピンでフィールドワークをしている日本の大学院生のあいだで回し読みされていたので、私もフィリピンの田舎で読んだ。いくらがんばってみても、結局は巨大な権力や構造に跳ね返されてしまう主人公が次々と登場する。読んだ後に自分の将来に大きな不安を感じたが、それからあまり小説を読まない私が、たまに松本清張の短編小説を買うようになったのも事実である。

山崎朋子著 『サンダカン八番娼館 』 文藝春秋、1982年
 かつての日本からの海外売春婦「からゆきさん」についての聞き書き。神戸の古本屋で買って、電車の中で読み始め、家でいっきに読み終えた。大変力のこもった作品である。底辺女性史の作品として評価があるこの本は、聞き書きの困難の記録としても読める。

土屋健治著 『カルティニの風景 』 めこん、(めこん選書)1991年
 東南アジアについての日本語で書かれた名著を挙げよ、といわれたときに真っ先に思い浮かぶのがこの1冊。主題はインドネシアのナショナリズムだが、インドネシアに興味がなくても、面白く読める。たいそうやさしく書いてあるが、奥は深い。

原口 武彦


黒田 龍之助著 『はじめての言語学』 講談社、(講談社現代新書)2004年
 本学の情報文化学科は地域言語の1つが必修である。その言語の習得に精をだすかたわら、人間にとって言語とはなにかという問題を考えてみることもいいことだ。本書はきわめて平易に書かれた言語学の入門書である。

石田 英敬著 『記号の知 / メディアの知』 東京大学出版会、2003年
 記号学の視点から、情報化社会といわれる現代社会における情報の意味を検討している。著者が「この十年来東京大学で行っている講義をもとにしたもの」だそうだ。扱っている主題の性質上、文中にカタカナ英語が頻出し、最初はちょっととっつきにくいかもしれないが、現代社会で情報が果たしている役割、意義について考えてみたいと思ったら一読の価値はある。

樋口 光明


レイ・ブラッドベリ著、小笠原豊樹訳『火星年代記』 早川書房(ハヤカワ文庫)1976年
 火星探査車が、火星から水の痕跡を送ってきた。今度は生物の痕跡が送られてくるのではないかとわくわくしている。こんな今、半世紀前に火星に想像力を働かせた二つの傑作SFを読んでみよう。異文化との遭遇がどれほど困難なことかがよく分かる。しかし、これはキリスト教文明とイスラム教文明の対話が困難を極めている現代を予見しているのではないだろうか。

フレドリック・ブラウン著『火星人ゴーホーム 早川書房(ハヤカワ文庫)1983年
 推薦理由は前の欄に書いた。ついでに、『マーズアタック』(1997年米/ティム・バートン監督/出演ジャック・ニコルソンなど)という映画を強く推薦する。異文化理解問題を絵にしたような作品である。

広瀬 貞三

1・小林信彦『日本の喜劇人』新潮文庫(新潮社、1977年)
 古川緑波、榎本健一、森繁久弥、伴淳三郎、三木のり平、山茶花究、有島一郎、堺俊二、益田喜頓、トニー谷、フランキー堺、脱線トリオ、クレージー・キャツ、宍戸錠、渥美清、小沢昭一、藤田まこと、白木みのる、てんぷくトリオ、コント55号、由利徹、藤山寛美、萩本欽一、たけし、などが登場。「由利徹はつねに、まず、自分を観客よりも低いもの、猥雑なもの、と規定しておいてから、おもむろに道化にとりかかる」。

2・矢野誠一『酒と博奕と喝采の日々』文春文庫(文藝春秋、1997年)
 笑福亭松鶴、トニー谷、水原弘、神田連山、三井弘次、桂文治、佐々木つとむ、藤山寛美、三遊亭圜之助、戸塚睦夫、伊藤一葉、桂文我、池田操、片岡市蔵、越路吹雪、などが登場。「舞台のために日常生活を犠牲にするのはよくあることだし、舞台人ならだれでもするが、自分が不器用だと言いつづけてきた越路吹雪は、日常そのものが舞台に出る前の準備だった。私はスターだと、自分で自分を信じこませようとする彼女」。

3・吉川潮『突飛な芸人伝』新潮文庫(新潮社、2001年)
 月亭可朝、川柳川柳、林家木久蔵、ヨネスケ、石倉三郎、祝々亭舶伝、柳家小三太、マルセ太郎、古今亭志ん駒、桂文福、快楽亭ブラック、ポール牧、正司敏江、ショパン猪狩、桂小枝、月亭八方、坂田利夫、などが登場。「商売とはいえ、自分が捨てた元女房を手加減せずにドツキ倒した玲児もエラい。ドツキはさらにエスカレートし、しまいには敏江の背中へ玲児が飛び蹴りを食わせた。高座の床に這った敏江は『やるやないか』とニッコリ」。

4・桑原稲敏『往生際の達人』新潮文庫(新潮社、2001年)
 計300名をこえる芸人・演劇人などが登場。「芸人」「孤独」「死亡記事」「自殺」「変死」「葬式」の6章からなる。「喜劇俳優の堺俊二も昭和四十三年八月十日、新宿コマ劇場の『爆笑大暴れ捕物帖』に出演中に脳出血で倒れた。そして二十五分後、舞台で演じた"おかん婆さん"の扮装で五十四歳の生涯を閉じている」。「芸術の世界でオリジナルなものを創り出そうとするすべての衝撃のずっと奥には、病理学上の孤独がかくされている」。

・澤田隆治『上方芸能列伝』文春文庫(文藝春秋、1996年)
 エンタツ・アチャコ、ダイマル・ラケット、ミヤコ蝶々・南都雄二、都家文雄、人生幸朗・生恵幸子、高田浩吉、暁伸・ミスハワイ、ルーキー新一、林正之助、正司敏江・玲児、曽我廼家五郎八、やすし・きよし、などが登場。西川きよしの弔辞。「やめとけやめとけいわれたけどコンビ組んでほんとによかったと思います。おおきに。あれからいろんな賞もろたなァ。自分のおかげやわ。わしも頑張ったけど、自分のおかげや」。

プラーソル・アレクサンドル

ミハイル・ブルガーコフ著、法木綾子訳『巨匠とマルガリータ上・下』(群像社、2000年)
 (上)モスクワの公園でかわされる無神論談義が文学界のボスの首をチョン斬る様相になるかと思いきや、あやしい黒魔術の教授の話はにわかに二千年の時を超え、総督ピラトと囚人イエスの対話をたぐりよせる。禁書として読みつがれ、世界の注目を集めた二十世紀を代表する傑作。
 (下)悪魔の誘いにのって愛する巨匠を救うために魔女となってモスクワの空を飛ぶマルガリータ。混乱をきわめたモスクワではついに当局が動き出したが、<悪魔御一行>の活躍はおとろえない。20世紀の三大傑作、ついにフィナーレへ!
群像社の解説より
              
チンギス・アイトマートフ著、佐藤祥子訳『処刑台』(群像社、1988年)
 カザフの原野で暗躍する麻薬組織と破門された神学生の格闘。破壊的な現代人から逃れ行く一組の狼の姿を通して精神の危機に警鐘を鳴らした長編ドラマ。
群像社の解説より


アンドレイ・プラトーノフ著、亀山郁夫訳『土台穴』(国書刊行会、1997年)
 「土台穴」はソビエト文学の中でもっとも奇怪な作品のひとつだ」(パブロフスキー)、「プラトーノフは翻訳不可能だ」(ブローツキー)といった評価にも示されているように「土台穴」テキストの奇妙さ、難解さは彼のほかの作品と比べても群を抜いている。同士と福祉の自制上の不一致、意識的な?回表現、異常に多用される「今」と「すでに」、同語反復、主体と客体の転倒。長編小説と短編小説の文体の混在。俗語のおびただしい使用。この小説はまた、ジャンルの点から見ても見極めの難しい作品である。風刺小説、哲学小説、文体破壊の手法によるリアリズム小説、あるいはグロテスクな戯画小説、しかも、ほとんど聖書の詩篇にも通じる叙情的逸脱が混入することもある。多ジャンル、多言語がひしめきあうポリフォニー小説といった言い方もあるいは可能かもしれない。
亀山郁夫(訳者)のコメント

宗澤 拓郎

青野由利『遺伝子問題とはなにか : ヒトゲノム計画から人間を問い直す』(新曜社、2000年)

篠原孝『第一次産業の復活 : 森と水と土の世紀』(ダイヤモンド社、1995年)

副島隆彦『日本の危機の本質 : 逆襲の国家戦略』(講談社、1998年)

牧野昇, 江崎玲於奈『総予測21世紀の技術革新』(工業調査会、2000年)

武末高裕『日本発ナノカーボン革命 : 技術立国ニッポンの逆襲がナノチューブで始まる』(日本実業出版社、2002年)

矢口 裕子

1.水田宗子『ヒロインからヒーローへ―女性の自我と表現(新版)』(田畑書店、1992年)
 アメリカ文学にしろフェミニズムにしろ、日本人の書くものは欧米(本場?)の最新の流行を口移しに伝えたり、チャート式に整理整頓して講釈したり、リアリティないなぁと思っていたわたしの眼からうろこを落としてくれた一冊。日本フェミニズム文学批評の嚆矢といえるでしょう。

2.舌津智之『どうにもとまらない歌謡曲―七〇年代のジェンダー』(晶文社、2002年)
 気鋭のアメリカ文学者である著者が、松本隆の手になる歌謡曲の歌詞に自らのジェンダー的齟齬・異和感を慰謝され励まされた軟弱な過去を告白しつつ語る、日本ジェンダー批評研究最新の成果。

3.アナイス・ニン『アナイス・ニンの日記 1931〜34-ヘンリー・ミラーとパリで』ちくま文庫(筑摩書房、1991年)
         『ヘンリー&ジューン』角川文庫(角川書店、1990年)
         『アナイス・ニン コレクション 1〜5+別巻』(鳥影社、1993-1997年)

 わたしがこの業界に足を踏み入れるきっかけをつくった罪つくりな人、アナイス・ニンの今年は生誕100年にあたる。今こそ再読・再評価が望まれる作家。「女として書く」という彼女のことばの意味は何か?

新潟国際情報大学 情報センター(図書館)